ここは東京、西新宿。
陽太「遅刻、遅刻〜!!」
食パンをくわえて朝のオフィス街を走るのは、医療器具メーカー「ドブ板メディカル株式会社」の営業3年目、出来内陽太(デキナイ・ヨウタ)です。
ビルに入り、階段を駆け上り、オフィスに飛び込んだ時、ちょうど時計の針が始業時間の9時を指しました。
陽太「間に合った~」
やれやれと、陽太がさわやかな気分で汗をぬぐっていると、
馬路手課長「おい、出来内」
鋭い目をした上司に声をかけられました。
陽太「ひっ! なんでしょう!」
陽太の上司の馬路手課長は、30代前半で課長になったキレッキレの仕事の出来る人です。そして……、
馬路手課長「始業時間ぎりぎりに来るとか、たるんでるんじゃないか?」
時間にめっちゃ厳しい人でもあるのでした。
陽太「はあ……すいません……」
馬路手課長「仕事っていうのはな、9時始業だからって9時ちょうどに来ればいいってもんじゃないんだ。余裕をもって、少なくとも30分前にはやって来る。そして、まず今日は何をすればいいのか、一日の段取りを考えるんだ。ちなみに俺は毎朝7時半に来ている」
陽太「早すぎ!!!」
何時に起きてるの!? この人!
と陽太が恐れおののいたその時でした。
???「すいませ~ん! 遅れました~!」
舌ったらずな声でそう言いながら、営業事務の女子社員、瑠雨図奈乃(るうずなの)が入ってきました。
瑠雨図さん「ごめんなさい~。電車が遅れちゃって……あれ? 陽太君も遅れたの?」
てへぺろっと舌を出して謝る瑠雨図さんは、お目目がくりくりしたかわいこちゃんです。
彼女は陽太の数少ない同期なのでした。
そんな二人を見て馬路手課長はため息をつきました。
馬路手課長「お前らそろいもそろって……本当に3年目なのか!? そんなに時間にルーズでいいと思ってるのか!? これから1週間毎朝8時に会社に来い!!! これは課長命令だ!」
陽太&瑠雨図さん「「ええええ~!!!!?」」
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