卒業祝いのためのレストラン探し
今年の5月、娘がニューヨーク市にある大学を卒業した。
アメリカでは、高校や大学の卒業式は家族が参加するほど重要なセレモニーであり、若いころニューヨークに住んでいた夫が「卒業ディナーのレストランは僕が探しておく」と張り切っていた。
ところが、卒業式が近づいてから夫が突然「忙しくて探している暇がない。君のほうが食べ物についてはうるさいから選択はまかせる」と言い出した。
「特別な催しだから高くてもいいよ」と許可をもらったのはうれしいが、人気のレストランは予約がすぐに埋まってしまう。ことに卒業シーズンは競争が激しい。 即座にEleven Madison Park、Jean-Georges、Le Bernardin、Per Seといったグルメの間で有名なレストランをチェックしたが、やはり希望の日はすべて満席だ。絶望しかけていたときに、ダメもとで確認したDanielに空席がみつかり、大急ぎで予約を取った。
Danielは、娘が高校生の頃に一緒に観た料理番組『Top Chef』にゲスト出演していたシェフDaniel Boulud(ダニエル・ブーラッド)のレストランだ。二人で「いつかDanielで食べたいねえ」と話し合っていたので、ぴったりの場所だ。トリップアドバイザーでもマンハッタンのレストランで一位にランクされているDanielなのに、空席があったのは奇跡みたいだった。
「Danielは去年ミシュラン星を1つ失ったから、その影響が出ているのかしら?」そんなことを語り合った。
「ミシュラン星なんかいらない」とシェフたちがいう理由
日本でも有名なミシュラン星だが、本家フランスではもっと深刻にとらえられている。2003年、フランスの天才シェフと名高いベルナール・ロワゾーは、ミシュラン星3つから星2に転落するという噂の最中に自殺した。ロワゾーは、友人だったダニエル・ブーラッドに、「星を失ったら、自殺する」と語っていたらしい 。彼の死後に発表されたミシュランガイドでは星3つを維持していたのだが、ロワゾーは噂だけで絶望するくらいミシュランの評価を恐れていたのだ。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。