世界の壁は高くない——海外で成功するための教科書(廣済堂出版)
〈意思決定の壁〉
「その場で決められない」日本人への米国人の戸惑い
日本と海外では、意思決定の方法の違いも大きいです。
たとえば、米国人との価格の交渉で、こんな言葉が出てくることがあります。
「この場ですべて決めよう」
しかし、日本人が好むのは、会社にもち帰って、細かな数字をメールなどでやりとりすることではないでしょうか。上司や会社への確認も必要となるので、その場で決めたら困ったことになります。しかし結果的に、相手の米国人は戸惑ってしまう……。こういうことが、よく起きます。
端的にいって、日本はビジネスの場で意思決定が遅いことが多いのです。
その場で決められないということです。
これは、意思決定ルートの階層が厚いということを意味しています。
そうした意思決定の仕方は、海外の人からすると、まったく理解ができません。どうしてそんなにいろんな人に聞かなければいけないのかと思われてしまいます。
しかも、ハンコをもらっているだけで、何かが起きるわけでもないことが多いのです。いったい誰が責任をもって実行しているのかわからない、ということになるわけです。
海外では、その人の組織での役割ははっきり決まっています。
意思決定者である責任者がいて、その人が自分の権限の範囲の中で意思決定をしていくのです。そして、小さな権限はどんどん部下に委譲していって、部下は自分の権限の範囲の中で意思決定していきます。
ところが、日本の場合はそうではありません。
たとえば、海外子会社をつくったりすると、子会社が何かをしようとするたびに親会社からの承認が必要になる、という話をよく耳にします。戦略、予算、採用といったひとつひとつも、海外企業の場合であれば、「責任者が責任をもってやってください」というところが、日本人が何人、何十人も集まって議論して、挙句の果てに、最終的にその設定や責任が誰にあるのかわからない状況になってしまったりする、ということを目にします。
実際、日本企業と仕事をする米国人からは、「日本人は何を考えているのか、何をしようとしているのかよくわからないことがある」という話が耳に入ってくることもよくあります。
他にも似たような例があります。
「じゃあ今度、打ち合わせをしよう」
という日本人の言葉が、西洋では大変なフラストレーションになることがあるのです。会社の文化もありますが、基本的にはスピードを強く意識しているのが、欧米の会社です。
「いや、だったら、今、この場で話し合って決めちゃおうよ」
というのが、彼ら彼女らの考え方なのです。
今この場ですぐに打ち合わせをして、決定してしまいたいのです。
また、日本人の場合、たとえば「今度、食事をしよう」というのは、あいさつのひとつになっていたりします。日本ではイエスなのか、ノーなのかが、極めてあいまいなケースが少なくありません。
しかし、日本独特の社交辞令が通用するのは、日本人に対してだけなのです。
特に「じゃあ今度、打ち合わせしよう」と社内で話した場合には、相手は準備をはじめ、ずっとそのときを待っていることもありますので、そこは適切な言葉を使ったほうがいいでしょう。
海外ではできるだけその場で決めるなり、はっきりさせるなりしたほうがよいのです。
〈働き方の壁〉
夕方の五時半には帰る米国、もっと働く時間が短い欧州
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