新鮮さが命! フレッシュでおいしいビールを飲むために
「ビールは醸造所の煙突が見えるところで飲め」
ドイツでは昔からこんな格言があるそうです。醸造所の近くで飲むビールは新鮮でおいしい。つまり、ビールを遠くまで運んで、時間が経ってしまったビールはおいしくないということです。
ビールは、熱・光・振動に弱いので、移動させたり保管させたりして時間が経っているということは、それらのリスクにさらされる可能性が高くなります。もちろん、今では運搬や保管の技術も進みましたし、新鮮さを売りにしていないビールも紹介してきましたが、多くのビールはできたてが一番。基本的に新鮮なほうがおいしいのです。
とはいえ、いつも醸造所に飲みにいけるわけではありませんから、ビールに移動してもらわないと困ります。そして、そのビールの移動がどう管理されているかによって、ビールの味が変わってくるのです。
今回は、ビールの流通段階でどんな方法があり、どう味に影響を与えるのか、ということを紹介したいと思います。
しっかり管理して運ぶ
ビールの流通には、さまざまな経路があります。主な経路はこんな感じです。
醸造所→運送業者→卸し問屋→小売店(酒屋・飲食店)
ここに海外ビールの場合は、インポーター(輸入業者)が入ってきます。これらのすべてでしっかり管理されていれば、おいしいビールが飲めるわけです。
例えば、飲食店や酒屋の店先にビールの樽や瓶が置いてあったりすることがありますが、こういった店が必ずしもしっかり管理しているとは言えません。瓶は光にさらされますし、気温が高いところであればどんどんビールが劣化していくことになります。おいしいビールを飲みたければ、こういった店は選ばないことが賢明です。
酒屋であれば冷蔵庫で管理せずに日に当てているような店。飲食店は一目ではわかりにくいですが、未開栓の瓶ビールを店先に置いていたりするとあまりクオリティーは期待できないですね。
輸送の段階でも同じようなことが言えます。
例えば、海外ビールは長い時間をかけてコンテナで日本まで運ばれてきますが、そのコンテナには大きく分けて2種類あります。ドライコンテナとリーファーコンテナです。
ドライコンテナは一般貨物に使われるもので、温度管理ができません。そのため、船便で日本まで送られてくると、コンテナ内の温度が上がってしまうのです。特に真夏の温度はすごいことになります。
一方、リーファーコンテナは定温管理ができるコンテナです。ビール輸送にはこれがベスト。リーファーコンテナで輸入しているインポーターのビールは、現地とほぼ変わらないクオリティーで飲むことができます。リーファーコンテナで輸入しているインポーターの中でも、注目したいインポーターを紹介しましょう。
ひとつはKOBATSUトレーディング。「ドイツビールはどうして何杯でも飲めるのか? 見かけたら即注文の5+1本」で紹介したプランク醸造所の「ピルザール」とクルー・リパブリックの「ドランクンセイラー」を扱っているインポーターです。その2種類だけでなく、プランク醸造所の「ヘーフェヴァイツェン」もぜひ飲んでみてください。
ヘーフェヴァイツェン
ドイツのいわゆる白ビールで、バナナの香りが特徴的でまろやかな味わいです。初めて飲んだときに「今まで飲んできたヴァイツェンは何だったんだ」と思うほどのおいしさでした。ビールの世界一を決めるワールドビアカップで2回銀賞を受賞している実力派ですが、そのビールが現地とほぼ同じクオリティーで飲めるというのはすごいことです。ただ、以前書いた通り、いつどこで飲めるとは言えないのが難点でしょうか。
もうひとつは、「【 保存版20店】ビールの品揃え抜群の酒屋&量販店&角打ち&通販サイト」で紹介したアンテナアメリカを運営しているナガノトレーディングです。
同社がしっかり管理して輸入しているということは、このビールを扱った実績があるということにも表れていると思います。「Stone Enjoy By 10.31.15 IPA」というビールです。
ストーンというサンディエゴでも評価の高い醸造所の限定ビールなのですが、2015年10月31日が賞味期限でそれが名前にもなっています。販売開始が10月23日で、輸送期間を加えたとしてもかなり短い賞味期限です。それくらいフレッシュな味わいを楽しんでほしいというビールなのですが、これを販売できるくらい同社の管理レベルが醸造所に認められているということでしょう。もちろん、残念ながらこのビールはもう飲めません。
代わりと言っては何ですが、同じサンディエゴのバラストポイントが造る「ビッグアイIPA」を飲んでみてください。
アメリカンIPAらしくホップの苦味がかなり強いのですが、甘味とのバランスが絶妙なビールです。缶と瓶がありますが、ぜひ缶で。瓶よりも缶のほうが、光を通さないので劣化しにくいのです。
しかし、リーファーコンテナにもひとつだけ欠点があります。それは料金が高いということ。ドライコンテナに比べると、輸送料が2〜3倍にもなるそうです。当然、それはビールの価格にも跳ね返ってきます。
クオリティーという面ではリーファーコンテナが絶対よいのですが、価格ということを考えるとドライコンテナで輸入されたビールも、一概に悪いとは言い切れません。もちろんクオリティーは落ちますが、価格をその分だけ抑えられるということは、ビールの選択肢を増やすには必要なのでしょう。
つまり、海外のビールが高いからといって、必ずしもビールの元値が高いわけではなく、クオリティーを保つためにその値段になっていることもあります。リーファーコンテナで管理して輸入するということは、インポーターにとっても売りになりますので、バックラベルに「リーファーコンテナで輸入しています」と記載されているビールもあります。ビールを買う際は、品質管理が行き届いているかも吟味できるとベストですね。
リーファーコンテナで輸入されたビールのバックラベルには、このように記載されている。
売りたい地域で造る
ビールが劣化してしまうのであれば、造ってから運ぶのではなく、売りたい地域で造ってしまおう、という考えもあります。
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