新訳 世界恋愛詩集

悲しみを食らい、泣きながら笑え」ペトラルカ

「禁じられた恋」はいつの時代、どこの国にでも。イタリア風ソネットを世に広く知らしめたルネッサンス期を代表する詩人のひとり、ペトラルカ。 彼の残した「ソネット104番」が菅原さんの超訳により現代に甦ります。
東京ミッドタウンの読書イベント「夜の読書館」の館長としても話題を集める詩人・菅原敏さんが、古今東西の恋愛詩に新訳という名のオマージュを捧げる本連載。気鋭の現代美術家・久保田沙耶さんのアートワークとともにお楽しみください。


僕は平和を失ったが それでも争いたくはない
いま 恐れながらも 希望を抱き
心は燃えながらも 氷のようで
空を飛びながら 地面に這いつくばり
何ひとつ持っていないようで
あなたといると 世界のすべてを抱いてるみたいだ


あなたは僕を監獄に閉じ込めた
鍵もかけなければ 解放することもない
僕のことを 自分のものだと言って欲しい
さもなくば どうか この縄をほどいて
とどめを刺す気がないなら
せめて この手錠を外して欲しい


目がなくとも見つめ 舌がなくとも叫び
死にたいと願いながら 命乞いをして
自分を憎みながらも 僕は人を愛している


苦しみを食らい 泣きながら笑い
生きることも 死ぬことも
いまでは ひとしく 愛おしい


誰がこんなにも 僕を変えてしまったのか
それは奥様 あなたなのです


どうか手紙は 燃やしてください



「悲しみを食らい、泣きながら笑え」

フランチェスコ・ペトラルカ(1304〜1374)

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新訳 世界恋愛詩集

菅原敏 /久保田沙耶

あまたの恋を書き残してきた、かつての詩人たちに、新訳という名のオマージュを。『新訳 世界恋愛詩集』は気鋭の詩人、菅原敏による新連載。いにしえの恋愛詩の輪郭を、菅原敏のいまの言葉でなぞっていきます。古い詩集に絵の具を落とし、新たな色で輪...もっと読む

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コメント

GnVA5OD2fUZHfOm ペトラルカのソネット、この訳を読んだ時は凄く衝撃を受けた。 1年以上前 replyretweetfavorite

sugawara_bin 悲しみを食らい、泣きながら笑え。 https://t.co/x36909hJZq 3年弱前 replyretweetfavorite

chiyio1011 古いイタリア語だからか今と綴りが違う単語があって興味深い QT 4年弱前 replyretweetfavorite

sugawara_bin 『悲しみを食らい、泣きながら笑え』ペトラルカ 指先の悲しみ舐めて連載更新。リストのピアノ曲でも知られるペトラルカのソネット、自分なりに超訳しています。 https://t.co/1WFM4wQ9rP 新訳世界恋愛詩集|ケイクス https://t.co/Kf1l1kmDHk 4年弱前 replyretweetfavorite