開校準備はまあ順調と言っていいペースで進んでいたが、次から次へと日本では考えられないことが起き続けて、何が「当たり前」なのかわからなくなってきていた。日本やアメリカのように物事が進むべきだと思う俺がおかしいのか、それとも、フィリピンでの様々な不思議な出来事が当たり前なのか……。
例えば、オフィスの内装工事もその一例だった。前のテナントの撤収に時間がかかったのも「フィリピンあるある」だし、そのあとのエアコンのダクトを買い取れ、と揉めたのも日本では、ちょっと考えられなかった。すでに当初の予定を1ヶ月以上軽くオーバーしているが、まだまだ終わる気配はなかった。これも「フィリピンあるあるか……」と自分を納得させそうになってしまうが、でもよく考えたらこの業者は日本人オーナーなわけで、なんだかどうも釈然としない。床の養生もせずに、ペンキとか塗りまくっている。これは当たり前なんだろうか?
工事は終わっておらず、工事中のオフィスはホコリだらけだったが、外のレンタルオフィスも安くもないので、僕らは完成したオフィスの一角を使い始めた。ネットはポケットWIFIといった具合で、作業がはかどらない。しかも、まだ作業員が出入りしている上に鍵がかかる部屋もないので、帰るときには全てを撤収して持って帰らなければならなかった。
果たしてネットは引けるのか?
そろそろインターネットを引きたいと思い、僕は幾つかのネット回線業者と交渉を始めた。唖然としたのが光回線の値段で、なんと月20万円くらいするのだ。一体どういう値段設定なのか……。ちょっと規模のコールセンターやオンライン英会話スクールは、ネットに100万を軽く使っているらしい。また、光回線自体も不安定なので、別々の会社から2本引き、冗長化を図るのが普通らしいのだ。
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