鳥居みゆき 後編「私は人一倍、死を恐れているので、いつも生にしがみついている」

お笑い芸人としてだけでなく、映像監督、小説家と幅広い活動をされている鳥居みゆきさん。鳥居さん率いる劇団「東京ギロティンクラブ」公演『幸福論』が好評のうちに幕を閉じたばかり。
鳥居さんの舞台では、まず観客の感情を激しく動かし、それをバネにしてメッセージを伝えていくのだそう。お笑いや舞台で一番の武器にしているものとはいったいなんでしょうか?

「幸せとか不幸せとか、あまり感じたことがなくって。よくわからないものじゃないですか。ちゃんとした基準なんてないし」。そう仰るように、表現をするうえで、幸や不幸を描くといったわかりやすいテーマを掲げることは、いつもしていないのですね。

 そう、わたしのやっていることって、「エロ、グロ、ガーリー」と言われることがよくあって、たしかにそりゃそうなんですけど、わたしは「エロ、グロ、ガーリー」をやろうということを意識しているわけじゃなくて。単独ライブのDVDがレンタル店でホラーの棚に並んでいたりもしますけど、なんでーっ! て感じ。 エロもグロもガーリーも恐怖も、目指すものというよりは、何か表現しようとしたら当たり前に入ってくるものです、わたしにとっては。だって、もともと怖いことじゃないですか、生きるのって。私は人一倍、死を恐れているので、いつも生にしがみついている。だから人が死ぬ話をつくったりもしてしまうんです。死をテーマに何かつくろうと構えているというのではなくて、そういうのはもっと自然に入り込んでくるものですね。

エログロや死の匂いはたしかによく漂っているけれど、それは結果としてそうなっているに過ぎないということですね。ただ、最近は作品の終わり方がすこしポジティブになってきた気がするのですけれど。

 そうなんですかね? 少しは、人のことをちゃんと認められる人間になってきたんですかね。

ポジティブであるのは近年手がけた仕事、ミュージシャンのプロモーション・ビデオを監督した作品に顕著です。Draft Kingの『贈る言葉』や『This is me.』。とりわけ『贈る言葉』では、ひとりの少女の成長が描かれていく。母の死、いじめ、リストカットといった負のイメージが出てくるけれど、その後に仲間ができ、同じ目標に向けて動き出すまでが映像で紡がれます。

 最後まで救いようがないというものより、ちょっとの希望が好きになってきて。たぶん自分がそういうもの、求めているんでしょう。自分に足りない部分を消化するためにものをつくっているところもあるので。希望、というか癒し、が欲しいんですよきっと。ペットでも飼いますかね。

 でも、『贈る言葉』の彼女にしてもそうですけど、少なくとも何とか生きていっているのなら、ふだんの生活が不幸一色ということじゃないと思いますよ。ふだんの何でもない生活を幸せと気づける人は少ないんでしょうね。このPVみたいに、不幸そうな場面を見せて振り幅をつけないと、生きているだけで幸せなんだということにはなかなか気づけなかったりする。

幸・不幸の振り幅を考えたり、感情の上下をコントロールしたりといった、作品の構造や構成は、いつも意識してつくっているものなのですか?

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山内宏泰

文学とは、なんなのか。文学者たちは今をどうとらえ、いかに作品に結実しているのか。言葉に向き合う若き作家たちの「顔が見える」インタビューシリーズです。

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meiharuru https://t.co/x1A2YOa1Me 鳥居みゆき「ものが伝わるのって、感情が動いたときでしょう?」 ヤバイっすね。ブッチギリであなた様が美しいっす。ヤバイっす。見てると、体から生きる力が湧いてくるんです。生き返った! https://t.co/AadaVPvIiv 2年弱前 replyretweetfavorite

Miiixn 作品構造の話とかシンプルだけど良かった 2年弱前 replyretweetfavorite

u5u 鳥居「ものが伝わるのって、感情が動いたときでしょう?」「『笑い』でも『泣き』でも何でもいいけど、感情を動かすものを置いてバネにする」 2年弱前 replyretweetfavorite

electrocvtion 東京ギロティン倶楽部「幸福論」、人によっては救いのない話だと解釈すると思うし、私もそうだった。鳥居さん演じる母親の役には感情を揺さぶられました。 https://t.co/FDLFgMBWkn 2年弱前 replyretweetfavorite