いま横浜に、異界が現れています。
大げさではなく、足を踏み入れただけでほんとうに、ここではない違うどこかへ連れ去られてしまう。そんな体験を味わえる展覧会が、山下公園に面した神奈川県民ホールギャラリーで開催されています。鴻池朋子展「根源的暴力」です。
ほどよく年季の入った建物地下に広がる会場へ入っていくと、ナメクジのお化けでしょうか、巨大な軟体生物のオブジェが出迎えてくれます。脇をすり抜け進むと、展示空間一面に並べられた無数の造形物の群れに出逢います。ウミウシやイソメ、アメーバのような原始的な生きものにどこか似ているけれど、そういった実在のものを真似てつくられたものではなさそう。
何かもっと、つくり手の内面の混沌とした部分が、外部に吐き出されてそのままかたちを成したものという気がしてきます。土をこねて素焼きにし、淡い色を付けただけの造形物なのに、対面していると、一つひとつが「ああどれも、生命の素だ」といった感に襲われます。
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