50年後 年老いた君がページを開く
そのとき僕はもういないかもしれない
だけど 君の髪が白くなり
赤く燃えてる暖炉のそばで
うとうと眠りに満ち足りて
ひとり静かに まどろむときに
この詩集を開いて欲しい
ゆっくり言葉を 指でなぞって
そして夢を見て 思い出して欲しい
若かったあの頃の 深く優しいまなざしを
これまで多くの男たちが
その美しさと 甘やかな時間を求め
真実の愛や 偽物の愛で
君のことを愛したけれど
たったひとりだけが
ひたむきに巡礼する君の魂を愛し
たったひとりだけが
君の顔に浮かぶ 悲しい時間さえ愛した
50年後 年老いた君がページを開く
そのとき僕はもういないかもしれない
だけど 遥か彼方の山を越え
星座の向こうに顔を隠した
たったひとつの愛のこと
ひとり静かに まどろむときに
すこし悲しくささやいて欲しい
ゆっくり言葉を 指でなぞって
そして僕らは手をつなぐ
時間を越えて ページの裏で
『50年後にページを開いて』イェイツ
ウィリアム・バトラー・イェイツ(1865〜1939)