ALMA MUSIC BOX × 宇宙兄弟

バリ島のお葬式では涙を流さず、ド派手なパレードが繰り広げられる!

国や宗教によって異なる、死者への弔い方。底抜けに明るい火葬曲があることを、ご存知でしょうか?
11名のミュージシャンのコンピレーションCD『MUSIC FOR A SYING STAR』に参加した「滞空時間」の川村亘平斎さんに、ライターの塩谷舞がインタビュー。
「踊り続けなければいけない、お葬式の音楽」……その真相とは?

これまで、天文学者の平松さん、ミュージシャンのミトさん、蓮沼執太さんのエピソードをお伝えしてきた「ALMA MUSIC BOX」と宇宙兄弟のコラボレーションシリーズ。今回は第4弾をお届けします!

世界一遠くを見ることができる「アルマ望遠鏡」がとらえた、太陽系のずっと向こうにある「ちょうこくしつ座R星」。

音楽家たちのインスピレーションの源にあるのは、その星が寿命を終えて、死んでいく瞬間。その旋律は、どれも悲しいものばかり……

ではありませんでした!

まずは、アポが駆け回るこちらの動画をご覧ください。

チャスコン・チャスコン!!今にも服を脱ぎ捨て火を持って踊りださん!という南国の音楽。この曲を創ったのは、インドネシアの民族音楽を奏でる「滞空時間」の川村亘平斎さん。ではここから、インタビューをお届けします!

■「死んでいく人に涙を流す風習がない」国のお葬式は、パレード?!

—川村さん。死にゆく星への楽曲が、底抜けに明るくてビックリしました。一曲だけ異質な感じがして……

川村亘平斎(以下、川村) そうですよね(笑)。でもこれは、バリ島でのお葬式の音楽が元になっているんですよ。

—えっ!

川村 僕は数年前までインドネシアやバリ島で暮らしていたんですが……あちらでは、死んでいく人に対して涙を流す、という風習がないんです。

日本のお葬式とは違って、バリ島でのお葬式は、めちゃくちゃ賑やかなんですよ。遺体を火葬場まで運ぶ間、楽器を演奏して神輿をかついでパレードして……。

ちなみに神輿の高さは死者の位によって決まります。カースト制がまだまだ生きているので。王族の人のお葬式なんかでは、神輿が高すぎて電柱にぶつかっちゃうから、町中の電線を切っていくんですよ(笑)! そして最後に、ものすごい炎で棺を燃やします。

—日本とは随分異なりますね。

川村 はい。そこに住んでいる人たちが、死に対してどんな価値観を抱いているか……ということだと思うのですが。バリ島の人々にとっての「死」は、ごく日常的な行事なんです。

■「もう踊りをやめてもいいよ」と許してくれるまで、踊り続けなければいけない

今回の楽曲では「星の死」がテーマになりますが、これは星のお葬式、ということになるのでしょうか?

川村 そうですね。ちょっと想像上のお話になりますが……。

〜〜〜チャスコン山に住む架空の民俗のお話〜〜〜

チリのアルマ展望台がある高原に、「チャスコン」という山がある。これは実在する山ですが。

そこには原住民族が住んでいて……彼らはまるでアルマ望遠鏡のように、遠くの星と更新する能力があるんです。だからもちろん、遠くの星が死ぬことも感じ取ることが出来る。そんな不思議な民族なんです。

彼らは「星が死ぬ」という信号を受け続けているから、大変なんですよ。もうず—っと、お葬式の曲を踊り続けなければいけない。誰か神サマのような存在が「もう踊りをやめてもいいよ」と許してくれるまで、延々と踊り続けるんです。

—最初聴いた時は陽気な曲だと思ったのに、あらためて聴くと、なんだかおどろおどろしい曲に聴こえてきました(汗)。

川村 怖い感じしますかね? 今日はちょっと説明しちゃいましたけど……もしかすると「あれ、この曲は何だか意味深だな」と、死というテーマが隠れていることに気がつく人もいるかもしれない。

もしそう感じてもらえれば、ちょっと嬉しいですね。

■無言の存在なのに、ムッタを導いていく「アポ」

川村 僕の目指す理想としては、言葉を使わないでも笑ってもらえたり、泣かせてしまったり……そういう琴線に触れるようなものを音楽で生み出せたらいいなぁと思ってまして。

—今回、宇宙兄弟コラボPVの主役に「アポ」を選んでいただきましたが、アポも言葉は使えませんね。

川村 そう、その無言の存在なのに、ストーリーの中でムッタを導いていくじゃないですか。アポは何か力を秘めているんですよね。「黙っているのに人を動かす力がある」というのは、すごくいいですよね。
おまけに、アポはバリ島のバロンという獅子舞にソックリで、バリ島のガムランを奏でる僕には、妙な親近感が……。


http://item.rakuten.co.jp より

—確かに似てますね(笑)。

川村 アポだけじゃなくて、宇宙兄弟にはセリフがないのに、ぐっとくるシーンが多いんですよね。一番大切なことが、一番ひっそりと描かれていて。

言葉を交わさずに、感動をもたらすことが出来る、素晴らしい漫画ですね。僕自身もそんな表現を続けていきたいし、今回のコラボレーションはすごく嬉しかったですよ。


何度も再生するにつれて、なんだかアポが、神の子のように見えてきてしまうこのPV。いやぁ、一見するだけではわからないものです。まさか、お葬式の音楽だったとは……。

ALMA MUSIC BOXのプロジェクトは、私たちに知らない世界のことをたくさん教えてくれます。

宇宙のこと、音楽のこと、地球に住む民族のこと……。これまでのインタビューも、ぜひおさらいしてみてくださいね。

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ALMA MUSIC BOX × 宇宙兄弟

塩谷舞 /小山宙哉スタッフ

”宇宙に憧れるヤツは皆、宇宙に行かずとも必ず一度は宇宙を見る” これは『宇宙兄弟』の中の登場人物、リックの言葉。誰よりも強く宇宙飛行士を夢見ていた少年は、17歳の若さで事故死。でも、彼は確かに宇宙を、心の中に見ていました。 ...もっと読む

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コメント

consaba 「死んでいく人に涙を流す風習がない」 1年以上前 replyretweetfavorite

GordonKazuhiro アポにそっくりだった  1年以上前 replyretweetfavorite