とっさに考えた1行で超バカ売れ

人は「得したい」という欲求以上に、「損したくない」「現状の苦痛や不安から逃れたい」という欲求の方をはるかに強く持っています。そのため、「恐怖」「不安」は人を購買に向かわせる強い動機になり、そのようにして売るためには、まず受け手に「問題意識」を持ってもらうところから始める必要があります。受け手に問題意識を感じさせることでバカ売れした1行をご紹介します。

 1995年にテレビCMの1行で超バカ売れしたのが、薬用成分配合の歯磨きアパガードです。

 発売元の株式会社サンギは、1974年に創業。長年にわたってむし歯予防成分であるハイドロキシアパタイトに着目し研究を重ねてきました。そして1985年にハイドロキシアパタイト配合高級歯磨き「アパガード」を発売しました。

 その後、当時の厚生省から薬事法の認可もおりました。しかし値段が高く小売店は大手メーカーに押さえられているため、商品は通信販売で細々と売っていただけでした。ただ歯を白くするという効能は口コミで知られていて、芸能人にも熱心なファンがいました。

 1995年、サンギに衝撃的なニュースが飛びこんできます。某大手歯みがきメーカーが大々的にアパタイト歯みがきを売る準備をしているというものでした。アパガードとは成分が違いましたが、消費者にはおそらく区別がつきません。サンギにはそれが我慢ができませんでした。

 サンギは社運をかけての大勝負に出ます。当時、年商20億円程度しかない会社だったにもかかわらず、10億円以上の予算を投入してテレビCMをうったのです。

 その際、「歯を白くする」「芸能人」という2つのキーワードでキャッチコピーを考えることにしました。

 もともとアパガードは、むし歯予防のために作られた歯磨きでしたが、それだけでは積極的に使いたい人は少ないと考えたからです。それよりも、二次効果として生じる「歯の白さの回復」の方が使いたくなる人が多いと考えました。またアパガードが多くの芸能人に使われていたのは事実で、過去にもそれを示唆することにより売上が上昇した経験があったのです。

 サンギの担当者が、準備に準備をかさねた当初のキャッチコピーは「芸能人は歯が白い」でした。
 広告会社に製作を依頼し、俳優の東幹久さんと高岡早紀さんを起用してのCMコンテが作成されました。

 しかし東京都の薬事監視指導で「芸能人は歯が白い」というキャッチコピーの問題点を指摘されました。「芸能人だって、歯が白くない方もいるし、これは正確な表現ではないのでは?」と係官に言われたのです。

 そこでサンギの担当者がとっさに修正し考えたキャッチコピーが、後に大ヒットをうみだすものになりました。それが、

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1行バカ売れ

川上徹也

大ヒットや大行列は、たった1行の言葉から生まれる!20年前に出版された文庫本をミリオンセラーにしたPOPなど、広告・SNSなどでの大ヒット事例を分析しながら、人とお金が集まるキャッチコピーの鉄則を紹介。結果につながる言葉の選び方をコピ...もっと読む

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コメント

t0e3r2u2 【メモ】ユーザーの興味喚起を引き起こすポイントのひとつが、恐怖と不安であるいい例。 2年弱前 replyretweetfavorite

daitakeuchi0428 CMって凄いんだな。 2年弱前 replyretweetfavorite