こんにちは、外科医の雨月メッツェンバウム次郎です。
今回の結論は、「女が男に惚れたとき、はじめ脈ナシならどれほど頑張っても逆転は無い」です。
先日のこと。
私は、友人の女性ふたりと200年以上前の寛政の時代から続く老舗蕎麦屋での遅めのランチを楽しんでおりました。その二人は学生時代からの親友で、今はどちらもベンチャー企業で働く26歳。
名前を出すと怒られそうなので、仮名で「オットリ秘書系美女」=オツ美(み)さんと「バリキャリ意識高い系美女」=バリ美(み)さんとしておきます。
いかにも秋晴れといった陽気の日で、時計はお昼を少し回ったころ。傾きかけた陽射しが入り込むなか、昼食客のピークが過ぎた蕎麦屋さんでまずはプレミアムモルツで乾杯。つまみは天たね(天婦羅のことです)と板わさで。
なんでもバリ美さんはここ1年半彼氏がいないそうで、久しぶりに好きな人が出来たらしい。惚れた男性はなんと7年前からの知り合いで、年に二回ずつ食事に行く間柄。彼にはずっと彼女がいたらしいのですが、先日ついに7年付き合っていた彼女と別れてしまったんだそう。
それまで「結構いいな」と思っていたバリ美さんは、これ幸いとなんとこの私とのランチの日の夜に食事をする約束をした。で、あたし今夜どうすればいい?という話でした。
なるほど、これは千載一遇のチャンス。攻めなよ攻めなよ、なんてはしゃぎながらあっという間にビールを飲みきったオツ美さんは日本酒を頼んでいます。「お燗ですか」「いや冷やで」
彼の写真なんか見せてもらうと、ラグビーかアメフトをやっていそうな爽やかスポーツマンタイプのイケメン。でも、私は一つの疑問が浮かびました。
「彼は長く付き合ってる彼女がいたのに、どうしてバリ美と会ってたの?なんか事件とかあったの?」と聞くと、
「それは私にもわからない。でもずっと年に二回、食事してきたんです。何もないし、口説かれたこともないわ」とバリ美さん。
「誠実なひとなのよ」オツ美さんがお猪口をぐいっと乾して口を出してきます。誠実だったら、食事には行かないんじゃないかな。口に出さず思いました。
「で、今夜はどうしたらいい?」とバリ美さん。
「でもまだ別れてちょっとしか経ってないんだし、男ってその辺の気持ちの整理に時間がかかるからまだアクションは起こさないほうがいいんじゃない?電車のレールのポイントみたくがっちゃんとは切り替え出来ない奴が多いよ、男は」と私。
「でもイケメンだし誠実なんだから、ぼんやりしてると余所に取られちゃうかも。早いほうがいいんじゃないの?」とオツ美さん。
「うん、7年も待ってたんだし、ちょっと今夜頑張ってみる」私のお猪口にお酒を注ぎながらバリ美さんは潤んだ目でおっしゃった。うーむ。拙速でなければ良いが……7年も待ってたって、その間彼氏いろいろいたじゃんか……しかし良く呑むなあこの二人は……。思いながら私も酒を舐めました。
結局この議論は平行線を辿ったので、我々は御前そばをさっとたくり綺麗にお化粧を直したバリ美さんを見送りました。白い蕎麦は見た目にも喉越しもさわやかでした。
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