100%美容院で会話を回避できる方法
人見知りする人間にとって、美容院は古より戦いの場である。
一生懸命美容師のトークに答えようとした時期もあったが、金を払ってる側のすることではない、あまりにも自由じゃなさ過ぎる、という結論に達し、美容師のトークをいかにカットするかに情熱を捧げるようになった。
まず雑誌に集中するのは基本である。それもファッション誌ではなく女性週刊誌、そしてできれば一番卑猥なページを熟読することをお勧めする。
これで美容師のほうにも「邪魔をしてはいけない」ということが伝わるであろう。自分は一回ニンテンドーDS持参で行ったことがあるが、相手は完全に引いていた。どうやら本気を出し過ぎてしまったようだ。
だが、どれだけバリアを張っても話しかけられることはあるだろう。その際はすべての質問を、はい、いいえで答え、会話が広がる要素を断ち切ろう。
また、9割方の美容師が聞いてくる「今日はお仕事お休みですか?」の質問には、たとえ働いていようと「無職です」と答えれば、言葉を失ってくれること請け合いである。
ちなみに自分はリアル無職の時、美容院に行き、シャンプー、カット、パーマでいちいち美容師が交代するため、仕事のことを3回聞かれ、「無職です」と3回答えさせられた。
さすがにもう、そこには行っていない。
なぜこれほどBBQが憎いのか
4月8日の日曜日の朝、突然夫から「花見に行こう」、と言われ私は飛び起きた。
「四季がない」でおなじみの私に(9月から冬が始まり7月に冬が終わる)、そんな提案は寝耳に水である。自分の人生の節目において、“大量の花”が咲いてもないのに散っていったことは確かだが、だからこそリアルな桜はもういいだろうと思っていた。
しかし、「そんなことより『桃鉄』を99年分やろうぜ」というのも、春の晴れた日には忍びなく、「4ページ中ゲロを吐いているオチが2ページ」という漫画のネームを描き終えたあと、夫と二人で花見のできる公園へ向かうことにした。
さすが花見日和の休日、いつもの駐車場は満車と踏んで特設駐車場に入ると、管理のおっさんが開口一番「400円」、である。
そして公園に入ると、満開の桜。その下にブルーシートの海であった。 「桜は日本人の心」と言いながら、その下でカルビをジャンジャン焼いてしまうのも日本人である。花見BBQをしている団体のなんと多いことか。
私はおそらく前世で火あぶりで処刑されたうえに、焼き肉のタレで食われているのだろう。リア充の行為の中でも、特にBBQを憎んでいるのである。
もちろん楽しそうで羨ましいから憎んでいるのであるが、いざ自分がそのBBQに参加してみると、びっくりするほど楽しくないのだ。準備や後片付けが面倒くさいからではない。その準備や後片付けの輪にさえ、イマイチ入りきれないからである。
おそらくリア充のDNAには「BBQ楽しい」と書かれており、対するこちらには「焼き肉1980円食べ放題」と刻まれているのだ。一生消せないばかりか、子孫にも受け継がれることだろう。
やはり来るんじゃなかった。と夫のほうを向き直ると、彼はコンビニで買った500mlの缶ビールに焼き鳥、花見というよりは河川敷スタイルで、着古した仕事用ウインドブレーカーには「JA」と書かれていた。
もちろん今から桜の下を陣取ろうとするタイプではない。むしろここでいいと、花からだいぶ離れたベンチに着座、ビールと焼き鳥をオープン。目の前には花見だというのに「ダイエット中だから」と栄養補助食ビスケットを食っている、殺していいタイプの嫁。
端から見ると恵まれていないにもほどがある(特に連れている女のグレードが低い)のだが、彼は特に「良い場所とってBBQしてる奴死ね」などとほざくわけでもなく、昼間からビールが飲めるなんて贅沢だ、と言っていた。
むしろ他の花見客のことなど見ていない様子であり、自分は他人と比べるからなにをしてもみじめな気持ちになるのだ、と夫を見て少し反省した。そしてビールを飲み終わった彼は立ち上がると、「今度うちの親兄弟たちとこういう所でBBQしたい」と言い放った。
こいつのDNAにも「BBQ楽しい」と書かれている。敵だ。