蛭子の論語

第5回】性欲と競争欲と物欲、蛭子の。

前著『ひとりぼっちを笑うな』が大きな反響を呼んだ蛭子能収。11月10日に発売される新作のテーマはなんと「論語」。孔子が残した言葉の数々を見て、蛭子は何を思い、語るのか。この連載では新書最新刊『蛭子の論語
自由に生きるためのヒント』(角川新書)から、エッセンスを抽出してお届けいたします。息が詰まるような現代で自由に生きるためのヒントが満載、お楽しみください。


蛭子の論語 自由に生きるためのヒント

●唯一の欲望は平穏に暮らすための金銭欲

孔子曰く、君子に三戒有り。少き時は、血気未だ定まらず。之を戒むるは色に在り。其の壮なるに及びては、血気方に剛し。之を戒むるは鬭いに在り。其の老ゆるに及びては、血気既に衰う。之を戒むるは得に在り。
(季氏第十六 七)

【訳】孔先生の教え。教養人とて三つの戒めがある。青年期は身体の欲求が不安定で動物的である。その性欲を戒めよ。壮年期は身体の欲求が盛んであるので他者に負けまいとする。その競争欲を戒めよ。老年期は身体の欲求が衰え失うことを恐れる。その物欲を戒めよ。
【編集部訳】人には年代に応じて三つの戒めがある。若いときは性欲を戒めよ。壮年期には競争欲を戒めよ。そして老年期は、物欲を戒めるべきである。

 まず、最初に言っておきたいのは、僕自身〝性欲〟が強いわけではないということ。もちろん、若い頃はそれなりに興味津々だったし、少しは遊んだりもしましたけど、結婚してからは、女房以外の人とはいっさい肉体関係はありません。そもそも、騙されそうで怖いんですよね。なので、今も相変わらず女房一筋。さすがに50歳を過ぎたあたりから、自分の性欲については、あまり考えなくなりましたよ。ましてやもう60代も後半です。身体的な欲求はほとんどないと言っていいでしょう。

 孔子さんの言うところの「壮年期における〝競争欲〟」も、僕の場合まったくないですね。子どもの頃から、他人と揉めるのが大嫌いで、できるだけ衝突を避けてきましたから。絵のコンクールとか漫画賞とかは別かもしれないけれど、他人を打ち負かしてまで自分が目立とうという意識は、まったくありません。むしろ、目立ちたくない。褒められるのは好きだけど、それで誰かの恨みを買うんだったら、元も子もないじゃないですか。だから、いわゆる〝血の気の多さ〟みたいなものは、生まれてこの方、一度も持ったことがないと思います。

 最後に〝物欲〟。これについてはいろいろな場所で繰り返し語っているのだけど、僕は物欲というものがほとんどない。貧乏だった頃に比べたら、今は多少稼いでいますよ。でも、だからといって高価なものを買ってみたり、贅沢をしたりとか、そういうことはありません。相変わらず質素な暮らしをしています。老後のことを考えて、マンションを買ったり、ちょっと株に手を出したりはしましたけどね。だから、この『論語』で孔子さんが書いている、「三つの戒め」は、僕にはあまり当てはまらないかもしれない。

 ただし、僕の場合、〝金銭欲〟—財貨を求める欲望だけは、昔から人一倍強かったように思います。それこそ30代、40代……いや、もっと若いときからあったな? とにかく、「働いてお金を稼がないといけない!」という思いは、高校を卒業してから今に至るまで、ずっとあり続けています。だから、財貨を求めてひたすら働いてきました。高卒なもので、あまり稼ぎのいい仕事には就けなかったですけどね。

 ただし、「自分の生活費は自分で稼がなくてはいけない」っていうのは、ずっと思っていました。お金がなかったら暮らしていけない。暮らしていけなかったら、誰かにお金を借りなくてはいけない。だけど、お金の貸し借りはトラブルの元にもなる。

 結局のところ、僕はトラブルがいちばん苦手なので、それを避けることを第一に考えながら、これまで生きてきたんです。

 そう考えたら、性欲についても同じことかもしれないな。女性に対する興味は今でもなくはないですが……浮気とか風俗って、トラブルの元凶になりがちじゃないですか。僕は本当にそれが嫌なんです。だから、仕事に関してはもちろん、家庭におけるトラブルは、是が非でも避けたいという信念がある。だから、浮気なんてもっての他です。

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前著『ひとりぼっちを笑うな』が大きな反響を呼んだ蛭子能収。11月10日に発売される新作のテーマはなんと「論語」。孔子が残した言葉の数々を見て、蛭子は何を思い、語るのか。この連載では新書最新刊『蛭子の論語 自由に生きるためのヒント』(角...もっと読む

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nakasan2234 |蛭子能収 自分と同じだ… https://t.co/Axc56fiXGO 約4年前 replyretweetfavorite