●人の判断基準は「顔」にあり
子曰く、其の以(用)うる所を視、其の由る(経る)所を観、其の安んじる所を察すれば、人焉んぞ廋さんや、人焉廋さんや。
(為政第二 一〇)
【訳】老先生の教え。その人物の日常生活の現在をしっかりと視る。その人物が経てきた過去を観めみる。その人物が落ちつこうとしている未来の着地点を察する。そうすれば、その人物は自分を隠すことはできぬ。本当の姿が分かるわな。
【編集部訳】人物を評価するときには、その人の「現在」「過去」、そして「未来」を見るべきである。
人の評価や分析をする際、僕の場合はまずその人の顔を見て判断します。その人の顔つきを見て、「この人は付き合いやすい人かもしれないぞ」とか「この人はちょっと苦手な部類の人だ」って判断するんです。
その予想が外れることはあるにせよ、どんなことでも話しやすくて、何でもすぐに受け止めてくれる人かどうかは、だいたいの場合ファーストインプレッションを信じて大丈夫。良い人っていうのは、人柄が顕著に顔に表れますからね。
僕は気さくな人が好きだけど、気さくな人は大体気さくな顔をしている。これもほとんど間違えることはありません。こう言うと怒られそうだけど、気さくな人はちょっとおもしろい顔の人が多いかもしれないな。
ちょっと恥ずかしい話なのだけど、顔で判断するという話しなら、今の女房も顔が僕の好みだったんですよ。
顔が好みで性格も良さそう。だからこうして結婚生活を送っています。でも最近になって、「自分は、他人のことがまったくわかってなかったのかもしれない」と感じることが多々あるんです。
女房と出会った頃に、デートをしていたときのことをふと思い出しました。デートコースや食事に関して、僕はまず、自分の好みから考えるんです。自分は映画を観るのが好きで、食べ物だったらカレーやとんかつなど、定番メニューが好物。「だったらきっと相手もそれが好きだろう!」「自分が好きなものは相手も好きだろう!」って安直に考えてしまうんです。だから、女房とデートをし始めたときも、まず映画に誘っていました。
何度目かのデートのときだったかな? 映画の時間に間に合わないからって、その前の食事を立ち食いそばで済ませようとしたことがあったんです。そしたら、女房に烈火のごとく怒られたんですよ。そこで初めて、彼女にとっては映画よりも食事のほうが大事だっていうことに気づかされたんです。やっぱり、女性って生き物はそういうものなんですかね。
僕は、他人のことを判断する評価基準が、極端に少ないのかもしれない。それこそ、判断するのは顔くらいだし、その判断が済めば、あとは自分が中心になってしまう。なおかつ、自分の関心のあるものが少なすぎるという弱点もあります。好きなもの、興味のあるものは競艇と映画のみですから、人との接点が広がらないし、むしろそれ以外のことはどうでもいと思っているふしがある。