「パリジェンヌ図鑑」は作れるか
最近インターネットで話題になっている「東京女子図鑑」という記事をご存じでしょうか?
「東京カレンダー」という雑誌のWEB版で連載されているもので、「綾」という東北出身の架空の女性が、アパレル業界に就職のため上京したことから始まるストーリー。彼女がキャリアを重ねていくのに合わせて東京23区内で引っ越しが繰り返され、そのエリアごとのレストランの紹介へとつながっていきます。
そのストーリー展開に、パリにいる私もついつい黙っていられない気持ちになってしまいました。東京砂漠に住んでいたときのなんだか重苦しい空気を思い出させてくれたからです。
まず綾が東京での生活をスタートしたのが三軒茶屋。彼女はこの街を「庶民的で気に入ってる」と言っていたものの、東京にも慣れてきた28歳の時に、合コンで出会った男性陣から「え? 三茶に住んでるの(笑)」と言われ、恵比寿へ引っ越します。
三軒茶屋より洗練されているという恵比寿で「東京の女が板についてきた」と言う彼女は、仕事の方も順調に外資系へ転職し給料UP。しかし、転職先で女性上司に「(恵比寿は)若いお姉ちゃんたちが住んでる街ね」と笑われたことを理由に銀座へ引っ越します。
さらに34歳になった綾は結婚して豊洲へ……と引っ越していきます。
この記事が物議をかもしている理由は、あまりにも上手く行きすぎている綾の人生と、「結婚は『する』と決めたら簡単なんです。イス取りゲームで一人だけあぶれてしまう恐怖に比べれば」のような、終始語られる彼女の強気な本音が主な原因のようです。
たしかにツッコミどころは多いとはいえ、街の特徴や空気、そこに住む人の描写をはじめ、まるで他人ごとではない彼女の言動のリアルさが共感をよんでいるのだと思います。
記事を読み進めていくと、綾みたいな人が身近にいそうな気すらしてきます。一方、同じ大都会であるパリでこういうストーリーってつくれるんだろうか? と気になりました。
考えてみたのですが……、パリジェンヌではこうした型にはまったストーリーって、想像ができないんです。
パリの街は20区まであり、1〜20まである区の数字がそのまま区の名前になっています。
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