「最後の恋」だと直感していた彼女と別れました
—— 本日はcakesの二大「先生」である、「フェル先生のさわやか人生相談」のフェルディナント・ヤマグチさん、「それでも僕は、外科医をやめない」の雨月メッツェンバウム次郎さんにお越しいただきました。
フェルディナント・ヤマグチ(以下、フェル) 私は別に本業は「先生」じゃないんですけどね(笑)。雨月先生とはゆっくりお話してみたかったので今日は楽しみです。
雨月メッツェンバウム次郎(以下、雨月) こちらこそ、今日はありがとうございます。私も外科医のかたわら執筆をしていますが、フェル先生もビジネスマンとしてバリバリご活躍されているのにあちこちで連載を持っていて、本当に尊敬しています。何より、恋愛についての洞察が深すぎる。実は私、自分の恋愛が全然うまくいかなくて……。
フェル 雨月先生がこじらせているのは、cakesの連載でよく知っていますよ(笑)。
雨月 はい、それで今日は、フェル先生に診察していただけたらなと。
雨月 いないです。ちょっと前に別れてしまいました。
フェル おや、そうですか。別れた彼女さんはどんな人だったんですか?
雨月 友達の紹介で知り合った、他業種の方です。ここだけの話なんですが私、彼女と付き合い始めたころに「最後の恋のはじめかた」というタイトルの記事をcakesに書いたんですよ。「最後の恋」というのは、つまり結婚にいたる恋、ということです。読者のみなさんに向けて書いたものですけど、私のなかで彼女はもしかしたらそういう相手かもしれないとも思っていたんです。それなのに……付き合って2ヶ月もしないうちに別れましたね。秒速でした……。
フェル 1年付き合ってやっぱり合わない、ってなるよりはよかったじゃないですか。最初はピンときたって言うけど、相手との相性ではなく、年齢的な焦りによるものだったのでは? そろそろ結婚しておこうかな、みたいな。
雨月 年齢的なものではなかったと思います。この人と一生一緒にいられたらいいなと、自然と思えたんですよね。それで、嫌なところも嫌だと言い合ったり、真正面から人間として向き合うよう心がけました。仰々しい言葉で言えば、「お互いを削りあうような恋愛」という感じです。
フェル 削りあうと最後はなくなっちゃいますけど(笑)。
雨月 実際2ヶ月でダメになりましたからね……。こんなに早く別れたのは初めてで、いま、自分に激しい自己嫌悪を抱いていています。
フェル きた! 自己嫌悪(笑)。今回の失恋では、どういうところに絶望してるんですか?
雨月 直感で「最後の恋の相手かも」と思いはしたんですが、彼女と私では合わないところもいろいろあったんです。それでも、好きだから飲み込めるだろうと考えた自分への過信と、それができなかった自分の器の小ささにうんざりしちゃって。フェル先生の言葉を借りると、恋愛投資家としては客観性を全く欠いてました。
男だからといって女の話の聞き役に回る必要はない
フェル 雨月先生は自分に厳しいですね。いつも、どういう女性がタイプなんですか?
雨月 性格でいうと、とても優しくて弱い者を放っておけない、人情味があるのに気丈な人が好きですね。ただ、非常に申し上げにくいお話なんですけど……やっぱり見た目が美しい人に惹かれます。
フェル 今の発言で、半数以上の女性読者を敵にまわしたかもしれないですね(笑)。まあでも、私も先生と同じで絶対に可愛い女性としか付き合いません。
でも、私は美人の尺度が人と違っているようで。「いまの子可愛かったよね」と言っても、「え、あの子? 服のボタンみたいな顔じゃないですか?」って驚かれたりしますよ。ボタン顔って……。
雨月 ボタン顔(笑)。私は綺麗めな感じがタイプで、芸能人だと吹石一恵さんが好きです。福山雅治さんと結婚しちゃいましたけど……。
フェル 吹石一恵さんは厳しいかもしれないけど……(笑)。雨月先生はすっきりした顔立ちですし、お医者さんですし、タイプに合う美人とゴールインすることは可能だと思います。何がいけないんだろう。私は今、久しぶりに超好みの顔の女性と接近しつつあります。夜にカフェでお茶しながら車の話をしたりしていますね。
雨月 夜にお茶ですか、いいですね。
フェル 雨月先生は女性とお茶するとき、どんな話をしますか?
雨月 そうですね……私は聞き役に回ることが多いです。というか、聞き役に徹するべしとしています。たまに自分が話す時は、つまらない話をしないように心がけています。仕事の話や自慢話ばかりにならないよう気を使いますね。
フェル 自分の話ばっかりするのも、別に悪くないと思いますよ。たくさんしゃべりたい子もいれば、ずっと聞いていたい子もいますし。
雨月 それは驚きです! 男の話を聞かせるより、女性にしゃべらせた方がいいものかと思ってました……。
フェル その発想って、すごくステレオタイプにとらわれていますよね。女だから話聞いてあげないといけないとか、男だからしゃべっちゃいけないとか、恋愛では無意味です。相手によって臨機応変にやり方を変えなくちゃ。それに「この人はいつでも自分が話をしたい人だ」とも決めつけられない。人間だから、気分がありますよね。同じ人でも、今日は自分がしゃべりたいって時と、今日は人の話を聞いていたいって時がある。そういうのを見極めないと。お医者さんだから、毎日患者さんの状態を見極めてらっしゃると思いますが、恋愛もそれと同じです。
「聞き上手」は合いの手が上手
雨月 職業病といったら言い訳なんですけど、いかに相手に話してもらうか、話させるか、情報を引き出すっていう医者のスタンスが抜けなくて、普通に女性と話す時でも、問診してしまうんですよ。医者になってしばらくしたら、いつの間にか私から話すのは得意じゃなくなってしまいました。
フェル さっきは「自分から話してもいい」とは言いましたが、自分の話を聞いてほしいという女の人はやはり圧倒的に多いので、基本的な進め方としては悪くはないと思います。
雨月 たしかに「聞き上手な男がモテる」という話をちらほら聞いたことはあります。
フェル ただ、「聞き上手」って、一方的に話を聞く人のことではない。「なんでそうしたの?」とか「それは大変だったね」とか、会話に応じたうまい合いの手をいれられる人のことですよね。会話って餅つきみたいなものですから。お餅をひっくり返さないで上ばっかりついちゃって、下はお米のままでした、なんていうのでは困ります。的確な合いの手が必要です。
雨月 あー。合いの手……入れていることは入れていますけど、私は形式的な合いの手が多い気がしますね。
フェル うん。それは今日も何度かあったかも(笑)。
雨月 女性にもばれているんでしょうね、私のそういうところが……。合いの手も苦手だし、やっぱり恋愛は少し休憩しようかな……。私、親しい友人には「恋愛をしばらく引退したい」って言っています。
フェル いやいやいや。一度失敗したからって、休憩しても何もよくなりません。いまがやりどきですよ。休んじゃいけません。
雨月 はい……。
次回、「恋愛に失敗しても休憩すべきではない——vol.2」は11月18日(水)更新予定。
構成:涼木まなか