「最近、佐川急便は不採算な顧客を切る動きを加速させている。その一環でアマゾンの東日本地域の扱いも取りやめた」
ある運輸業界関係者はこう漏らす。その発端は、佐川がアマゾンに値上げを打診したことだったという。下請け業者によると「佐川は平均で200円超の料金のところ、1割以上の値上げを持ちかけた」というのだ。
大幅値上げを提案すること自体「アマゾンに断られることを前提で切り出したとしか思えない」。
つまり、実質的には佐川のほうから手を引いたといえる。佐川がアマゾンとの付き合いを考え直すのも無理のないことだ。
多くの運輸業者が、規模の大きさ故に、アマゾンとの取引を続けてきた。しかし、その取引を維持したいと思うがあまり、採算の上で無理をし、現場が疲弊するなど、大きなゆがみが出始めている。
日本郵便もその一つだ。アマゾンとの料金は本社のトップ交渉で決まり、支社、支局レベルには全く数字が開示されていない。
労働組合幹部は「労使協議で採算状況を問うても、一切答えない。アマゾンは配れば配るほど赤字のはず」と指摘する。「そもそもアマゾンの物流を担うだけの体制ができてないから現場は大混乱だ」という(コラム-1「日本郵便の現場を悩ますアマゾンの“大きさ”問題」参照)。
今、一部の郵便局ではひそかに「計画配送」と称して、休日中に配り切れない郵便物、例えば、クレジットカードやキャッシュカードなどの配達を後回しにして、アマゾンを優先する措置が取られている。
“計画配送”を行っている東京都と埼玉県の郵便局員は、「銀行や信販会社から高い料金をいただいている書留や特定記録郵便が、価格の安いアマゾンの配達の後回しになっているなんて、ばれたらどうするのだろう」と口をそろえる。
うわさされる自社配送網
運輸業者は下請けへ
これだけ、運輸業界がアマゾンに必死になって食らい付いているのは、今以上にアマゾンが成長するかもしれないという期待があるからだ。しかし、実はアマゾンにはしごをはずされる可能性がある。