「セックス」をすることは、得か? 損か?
ケンコバ(以下、コバ) さきほどから、芳麗さんは「身体をすぐ許すことには抵抗感がある」とおっしゃってますけど、なんでそんなに守っちゃうんですか? この際、聞かせて下さいよ。
芳麗 守ってしまうというよりは、あまり女性が身体を武器にするというか、エサにするのはよくないなって思ってるんです。よく女性誌とかで書かれているような「付き合うまではさせない」とか「結婚を優位にするためにさせない」とかっていう考え方は、ちょっと計算高い気がして好きじゃないんです。
コバ ううむ。
芳麗 でも逆に、男の人に愛してもらおうとか結婚してもらおうっていう依存心がなければ、身体はどっちだっていいじゃないかって思うんです。いつ、そういう関係になったとしても。
コバ なるほど。
芳麗 『「美学」さえあれば、人は強くなれる』にも登場しますけど、コバさんが好きな『ガラスの仮面』の姫川亜弓さんみたいに、自分の大切にしているものがあれば、多分関係ないんですよ。
打算がなくて、「自分が好きだから相手と関係をもつ」という主体的な考えを持っている人が、私の理想の女性なんです。だから、「させてあげる」と思うのは嫌だし、「彼を逃しちゃいそうだから早めにする」みたいな考え方も、どうだかなぁと思います。自分の身体を安売りするのもよくないけど、武器にするのもよくないなっていうのが私の考え方です。
コバ じゃあ、なんで身体の貞節を守ってるんですか?
芳麗 それは、今はだいぶ緩和されましたけど、私が臆病な性質だからでしょうね。だから、ケンコバさんのいう「風呂に入ったらしまいやで」っていう感覚も正直よくわからないんです。自分の意志なわけだし、もう大人だからしたかったらすればいい。
でも、そもそもたくさんの人としたいとか、誰とでもしたいっていう欲望が薄い。ある程度心が通っている相手じゃないと、する気になれないんです。単純に、風呂に入った後も、「良かったな」って思いたいし。
コバ そりゃそうですよ。明らかに、俺が言っていることのほうが、頭がおかしいんでしょうね。
芳麗 アハハハ。
好きじゃない女の子とのセックスのほうが、お得感がある
コバ でも、俯瞰して考えてみると、1回誰かとセックスすることは、人生1回得したと思えると思うんですよ。だって、「なかったセックス」が1回増えているんだから。
芳麗 そこは、「セックスをすることが得だ」って思うかどうかですよね。
コバ お得感ありますよ。僕の場合、1回誰かとできたら、「1回得した」って思いますもんね。だから、相手の人にはすごく感謝しますよ。
芳麗 すごくカマトトっぽい質問ですけど、好きじゃない女の子とした時も「お得」だと思うんですか?
コバ はい。むしろ、お得感満載みたいなところはありますね。好き同士でするのは当たり前というか。だって、ハードルがすごく低いじゃないですか。
芳麗 男性は本能として、「一人でも多くの女性とそういう行為に至りたい」っていう感覚があるから、お得に感じているのかもしれないですね。
女性もすごく理想のタイプの男性となら、「一回だけでもしたい!」って思う人もいるだろうし、「1度、知らない世界を教えて欲しい」みたいな願望はあるでしょうけど。普通に出会った男性と、一度きりの関係で終わったとしたらトクだなんて思えない。心のどこかで敗北感があるんじゃないかな。
コバ そうなんだ。
芳麗 単に勢いでセックスしたとしても、それがきっかけで相手を好きになってしまいがちなのが女性ですから。こうなったら継続的に関係をもって、「恋愛」に持ちこみたいと思ってしまう。身体の関係をもった相手に、精神的にも愛されたという証明が欲しくなるのかもしれません。
コバ 一度、実験してみたいと思っているんですけどね。女性側に「なかなかさせてくれないな、この人」と思わせてからことに至った場合、どう感じるのか。まぁ、僕が我慢できるかなって不安はあるんですけど。
芳麗 それはこじらせた実験ですね。コバさん、43歳でそんな実験する必要……あります?
コバ ……ないですね。あまり手を出さないと「この人、ゲイかな」とか余計な疑いがかかりそうですし。でも、この実験って、すべての女性がやっているじゃないですか? だから、僕もやってみようかなと。
芳麗 女性の目線で言わせていただくと、すぐに関係を持たないからといって愛されるという感覚はないけれども、損をすることはないかもしれないですね。
コバ 損得ですか?
芳麗 損得というか、肉体関係をもつのに時間がかかったことで、愛されないということはなかったですね。というか、それで終わる人は、その程度の関係性の人。
コバ そうかあ。
芳麗 過去に一人、すごくいい関係を築けた男性がいたんです。相手の男性は女性にとてもモテる、男女関係に慣れた人で「先にそういうことをしたい」というタイプだったんですけど、私は臆病だし、スイッチも入らなくて。しばらくそういう関係はなかったんです。それでも、別に私のことは好いてくれるようだし、人として気も合う。
だから、長らく友達として仲良くしてたんですけど、ある時、急に私のほうでスイッチが入って、そういう関係になったことがあって。結果、すごく愛されました。
コバ でも、ずっと友達だった相手と、セックスするって、すごくテレませんか?
芳麗 ……テレました(笑)。
コバ テレるでしょ。だから、僕にはそれはできないですね。引っ張れば引っ張るほどに恥ずかしい。笑っちゃうかもしれないですね、途中で。
芳麗 でも、安心感がもたらす心地よさって、ずっと深いなって思いますよ。精神が身体を越えている、身体が後から付いてきたみたいな。でも、コバさんも本当はそっちのほうが、しっくりくるタイプなんじゃないですか? だって、乙女じゃないですか。
コバ そうですね、僕はずいぶんな乙女ですから。最近、本当に自覚あります。僕は汚いおっさんの皮をかぶった乙女なんですよ。だから、心の貞節を守れない浮気は、僕にはできないです。
『マディソン郡の橋』は浮気だけど、『マッドマックス』は浮気じゃない
芳麗 この前、「風俗は浮気じゃない」っておっしゃってましたよね。でも、心は浮気してなくて身体だけの浮気だったとしても、私だったら傷つくと思いますよ。多分、50歳になっても、風俗に行かれたら傷つくと思う。
コバ 最初は「それでもいいんじゃない」って言っている子も、だんだん怒り出しますからね。僕は別におおっぴらに「風俗に行く」と言うわけじゃないですけど、やっぱり気づいちゃうみたいで。
芳麗 わかる気がします。
コバ 僕はこういう人ですからね、相手の女性には無理させてるんだろうな、とはすごく思います。
でも、なんで風俗はダメなんですかね。なんで身体の浮気はダメなんですか?
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