ヘイトスピーチの予感 五木×古市対談【第6回】

五木寛之さんと古市憲寿さんの対談は最終回! 世代間の軋轢は階級闘争に発展? 共存できる道は? 題して「戦後70年、老人と若者はわかりあえるのか?」 52歳差の論客が語り合う衝撃の社会論!

ヘイトスピーチの予感

五木寛之(以下、五木) 今の若者の間には、そんなに嫌老感が目立つわけではない、という古市さんのお話を聞いて、最初のほうでも言いましたけど、少しホッとした、というのが正直なところです。ただ、同時に、「嫌老社会はこれからなんだな」ということも、再認識させられました。話してきたように、僕は嫌老社会を生む最大の原因を、年金、医療という社会保障制度をめぐる「利害対立」だと考えています。現状では、自らが被る不利益の大きさに、まだ下の世代の多くが気付いていないのだけれども、それはいつか白日の下にさらけ出される。そうなれば、一気に空気が変わるだろう、という予感が僕にはあるのです。

古市憲寿(以下、古市) 戦争が一晩で始まったわけではないように、今は嫌老社会の準備期間にあるのかも知れませんね。

五木 サラリーマンは、給与明細をもらいますよね。給料の半分も持っていかれるようになったら、さすがに「何なんだ、これは」という話になるでしょう。

古市 たとえば「若い世代の負担が大き過ぎるから、年金の支給額を大幅に下げます」「医療費の負担率を高めさせていただきます」という話になったら、高齢者の方は是認するでしょうか?

五木 いや、それはないな。特に、新たに受給者になりつつある団塊世代なんかは、「やっと年金をもらえるようになったんだ」「自分たちだって、長く保険料を払ってきた」と抵抗するはずです。

古市 嫌老社会というものを具体的に考えてみると、人口の多い団塊世代が要介護状態に入ることが、一つの転換点になるかもしれません。そこで、一気に下の世代の負担が膨らんで、「不利益」がより可視化されると思います。堺屋太一さんの小説『団塊の世代』の最終章は、まさにそういった世代間格差がテーマでした。

五木 その状況になった時には、高齢者に対するヘイトスピーチが始まる恐れを感じます。「嫌韓」ならぬ、「嫌老ヘイトスピーチ」ですね。

古市 『「若者奴隷」時代』という本を書いたマンガ家は、実はそれまでずっと韓国バッシングのマンガを書いていた人です。韓国など隣国に対するバッシングが、高齢者に向かう可能性は確かにあると思います。

五木 なるほど。それも、「炭鉱のカナリア」かもしれません。いずれにしても、「対立」は避けられないと思うんですよ。高齢者と勤労者、それに若年層というのは、もう世代というより、独自の利害を背景に持つ「階級」になっていく。「世代間対立」といった生易しいものではなく、「階級闘争」です。怖いのは、それが限りなく先鋭化して、「国を二分」するようになっていくこと。僕があえて被害妄想的に取られるかもしれない「予感」を語るのは、それを避けたいからにほかなりません。

やがて「ノラ老人」の世界に?
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五木寛之×古市憲寿「嫌老」の時代に

五木寛之

100歳以上の高齢者数、6万人。2050年には68万人に達するとも。急速に進む超高齢化社会に不安や違和感を持つ人も増えています。作家・五木氏はそんな違和感を「嫌老感」と表現。『嫌老社会を超えて』を上梓しました。最終章では若手代表として...もっと読む

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コメント

wackosato 言い当ていることもあり、非常に考えさせられる…。 4年弱前 replyretweetfavorite

consaba 五木寛之+古市憲寿 4年弱前 replyretweetfavorite