10月第3週の主なできごと
・国立大学:33校で文系見直し(10月20日)
・TSUTAYA図書館を白紙撤回、愛知県小牧市(10月20日)
・DeNAラミレス新監督が就任会見(10月21日)
・横浜のマンション傾斜、手の込んだ改ざん(10月22日)
・橋下氏、維新・松野代表を告訴へ(10月24日)
アップデートされる「お嫁においで」と結婚観
速水健朗(以下、速水) 前回は、福山雅治の結婚から「現代におけるしあわせと家族と安倍政権」みたいな話をしたけど、今回も続きということで。
おぐらりゅうじ(以下、おぐら) 話題にした「家族になろうよ」は2011年ですが、その前の2002年に福山雅治は、加山雄三の「お嫁においで」をカヴァーしてるんですよね。
速水 『The Golden Oldies』という邦楽のカヴァーアルバムに収録されてる。曲調をアップテンポにしていることもあって、歌詞にも実感がこもってない印象があるね。
おぐら で、今回まず話したいのは、2015年における結婚ソングについて。つい最近、ラッパー/プロデューサーのPUNPEEが「お嫁においで2015」という曲をリリースしました。これもタイトル通り「お嫁においで」をサンプリングしていますが、ただのフィーチャリングではなく、歌詞が2015年度版にアップデートされています。
「お嫁においで 2015」/ 加山雄三 feat. PUNPEE
「ドープにスワッグにヒップに彼女を幸せにする」
なんて…この歳で言えたもんじゃないな
しかも宿無し 極楽とんぼのままじゃぁな
(歌詞:PUNPEE)
速水 このタイミングで加山雄三を担ぎ出すセンスはいいね。歌も歌う、役者もやれるスターで、1960年代当時の理想の旦那様を体現する存在だったという意味では、今で言う福山的な存在だね。
おぐら 歌詞の内容としては、今この時代に、おれらの世代は「お嫁においで」なんて昔みたいに気楽に言えないよな、と。でもMVを見ると、曲の終盤「なるようになってく 多分ノリさ よろしく」って、ユルい感じで新婚生活っぽいシーンになるんですよね。
速水 元の加山雄三の歌の強引さもすごいけどね。「♪もしもこの舟で君の幸せ見つけたら すぐに帰るから僕のお嫁においで」「♪舟が見えたなら ぬれた身体で駈けてこい」って。「舟」「ぬれた身体」「お嫁」って、超一直線。
おぐら しかも「♪珊瑚でこさえた赤い指輪あげよう」ですから。
速水 「♪“幸せだなア”なんて今のご時世じゃそう言えたもんじゃないけど」って、ここの部分は「君といつまでも」へのアンサーなのね。加山雄三の最大のヒット曲で、オリコン以前の時代、1965年のヒットだからちゃんとは判定されてないけど300万枚と言われている。
「家族は大事!」と歌うJレゲエ
おぐら まだお見合い結婚も多かった時代ですよね。
速水 統計で見ると、日本でお見合い結婚の数が恋愛結婚に抜かれるのって、この曲のヒットの直後くらい。結婚観とその時代の音楽は、無関係ではない。ちなみに、この「お嫁においで 2015」はどのくらい話題になっているんだろう。
おぐら YouTubeの再生回数は、現時点で38万ちょっとです。ツイッターで「お嫁においで 結婚式」で検索したら、さっそくこの曲を結婚式の二次会でかけてる人はいました。
速水 SEAMOの「関白」よりずっといいよ。さだまさしの「関白宣言」のリメイクをSEAMOが「関白」として歌ってちょっと流行ったのが10年前。さだまさしには、俺についてこい的なことを言いつつも、最後はなんちゃってって、あえて「亭主関白」を時代錯誤に持ち出したという感覚があったんだけど、SEAMO版は、割と素直に男性優位というのを前面に出してきた感があった。
「関白」/ SEAMO
俺より先に寝るな 後に起きるな
唯一のお前の自由時間はお昼だ
愚痴は言うな! おれは言うが
黙って聞いて つまらないギャグでも笑って
(歌詞:SEAMO)
おぐら この歌詞、今の時代に読むと、冒頭からもう一言一句アウトなフレーズでクラクラしますね……。PUNPEEの、幸せにするなんて言えたもんじゃないけど、そんな若くもないし、一緒にやっていこう、っていう目線とのギャップが凄まじい。
速水 SEAMOって、当時の10代半ばの世代に支持されてたんだけど、この歌では、両親も大事だって言ってるんだよ。家庭的保守主義志向。
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