介護小学生

介護小学生」が超高齢化社会の救世主?—金山カメ インタビュー【前編】

電子書籍で大きな話題を呼んでいる『介護小学生』は、放課後に友達と遊ばず、寝たきりのじーちゃんと認知症のばーちゃんを1人で看ていた漫画家・金山カメが「在宅介護」のリアルをユーモアと感動たっぷりに描いたエッセイ漫画です。cakesでは特別に、著者インタビューとコミック本編を複数回にわたって連載。第一回目は【インタビュー・前編】をお届けします。

超高齢化社会 これから介護小学生の時代がやってくる?

— 『介護小学生』の発売おめでとうございます! 金山さん初めての書籍ですね。金山さんが小学生のころに体験した「小学生で祖父母を介護」という、すさまじい日々が綴られていて、大きな話題を呼んでいます。でも、そんな反響に反してお悩みがあるとか……?

金山カメ(以下、金山) そうなんです! おかげさまで良い評判をいただいてはいるんですが、いかんせん、私自身それほど実績のあるマンガ家ではないもので……。まとめて出していただいたんですが、電子書籍版だけなんですね。

— 好評で2巻まで出たんですけどね……。

金山 いや、ほんと出版社さんには大感謝しております!ただ、やっぱり紙の単行本にしたいんです。マンガのもう一人の主役というべき母も60歳過ぎてパソコンなんか使えないと言っていますし、父に至っては携帯すら怪しい(笑)何より私がこの作品は幅広い世代に読んで頂きたいので紙の単行本にしたいんです。

— それはぜひ紙の本にしたいですね!

金山 それで、出版社さんにお願いしたら、電子書籍版がたくさん売れたら紙の本を考えてくれるそうなんです!

— おお、それは。

金山 だから今回はcakesさんにこの場所を借りて、まず電子書籍版を買ってくださいと…買ってくださ~い!!


介護小学生(笠倉出版)

— そんなあからさまに(笑)。では、できるだけたくさんの人に『介護小学生』ってどんな話なのか知ってもらえるようにお話してもらいましょう!そもそもですが、『介護小学生』ってすごいタイトルですよね……。

金山 よく言われます(笑)。私は小学3年生のころからじーちゃんとばーちゃんの介護をすることになりました。私の場合は母や妹といっしょに行っていましたが、女性の出産年齢があがっていることや平均寿命がのびたことで、今後は「小学生の子供が介護する立場」というケースも十分ありえるんじゃないかと思っています。

— たしかにこれだけ高齢化社会が進むとありえるかもしれませんね。

金山 はい。実際、祖父母が長生きで、子供が先に亡くなってしまって孫が介護、というケースもよく聞きます。マンガに出てくるのは父方の祖父母ですが、私の母方の祖母はまだ存命で90歳を超えていて、子供である私の母は60歳代後半。孫の私がアラフォーで、ひ孫の私の娘が小学生。もし母の世代が抜けてしまったら、私の世代が介護を担うことになります。でも、夫婦共働きが当たり前の今、30代40代で介護に専念できるかといったら実際難しいと思うんです。

— 金山さんだけではなく、だれでも当てはまるってことですよね……。

金山 もちろん、今では色々な介護サービスを利用しながら仕事をすることもできると思います。でも、全て介護サービスに頼って家族が関わらないっていうのは、ハッキリ言ってもったいない!と思うんですよ。だってあんなに面白い人たち、特に幼少期に関わらないのは損です。


介護は海外留学よりもエキサイティング!

— 「もったいない」というのは新しい発想ですね(笑)

金山 うちのばーちゃんのは認知症のフルコースみたいな人で「物忘れ」「徘徊」「*1 異食」「被害妄想」「幻覚・幻聴」「不眠」すべて網羅していました。言ったこと1秒で忘れるどころか、現在進行形のことすら忘れる人だったんです。私と妹のおやつのメロンを、今まさにモリモリ食べながら「子供のおやつを食べちゃうなんて酷い人がいるわねぇ!」って真顔で言ったり、ばーちゃんの実の息子である父を「いつもやって来る泥棒」と名付けたり、豆腐のパックにウンコをきれいに詰めて仏壇に供えたり、さらにはそのウンコを食べようとしたり…。笑顔で私にもウンコを食べろと勧めてきたりもしましたね。
*1「異食」:普通は口にしないようなもの(ティッシュや土、ビニールなど)を食べてしまう病気。


金山家ではこんなこと、普通の出来事なのです

— うわぁ……。

金山 それだけじゃありません! 2日間寝てないのに昼間10分くらいうたた寝しただけで復活して、真冬の夜中にハイテンションで県道をダッシュするとか日常茶飯事。でも、こんな面白いことを素でできるってすごくないですか? 狙ってやろうとしても絶対に思いつかない。てゆーか思いついたとしても実行できない。だから、このギャグセンスは幼少期に触れておくべきです!(笑)

— その事態を面白がれるか難しい感じもしますが……(笑)。

金山 もちろん大変は大変ですから、介護サービスはどんどん活用すべきだと思いますが、介護を「お母さん一人任せ」ではもったいないと思う。認知症フルコースのばーちゃんや、寝たきりで言葉が喋れなかったじーちゃんとの関わりは、海外留学より異文化交流です。「どうしたらこの人たちとコミュニケーションがとれるのか?」を自分で考えて瞬時に判断して行動しないとウンコ漏らされるし、究極、死んでしまうかもしれない。海外留学より絶対にエキサイティングで世界が広がると本気で思います。ボディランゲージだってまともに通用しない世界なんですから。

— 貴重な経験ですよね。それだけのことを経験していたら世の中のほとんどのことが平気になりそうな…。

金山 ええ。私は英語に関してはまったく話せませんが、街で徘徊してる認知症のお年寄りを見つけるのは得意です。覚えてるだけで6~7人は保護していますから。このあいだも地元の繁華街で、顔面血だらけで歩いているおじいさんがいて、絶対に“認知症で、徘徊中に家が分からなくなっておまけに転倒しちゃった雰囲気”なのに誰も声をかけない。「何で?」って思いながら保護して、その後は警察にお任せしました。

— 都会の人は冷たいんでしょうか。

金山 でも後で思ったんですが、明らかに認知症のお年寄りだとわかっていても、どうやって声をかけていいか分からないですよね。しかもこの場合は、顔面血だらけの人に果たして声をかけていいのかわからないし、声かけたら逆に自分が顔面血だらけにされる可能性だってありますよね。でも、その判断ができるように英才教育してくれた、じーちゃんとばーちゃんには、今、本当に感謝しております。

— たしかにそれを教わることができたというのは大きいですね。

金山 実際、日本に住んでいて日本語の喋れない外国人に声をかけられる率と、認知症のお年寄りに出会う率だと、たぶん認知症のお年寄りに出会う率のほうが高いと思う。最近はスマホのおかげで、英語でしゃべれなくてもアプリで何とか対応できますし。だから、英会話より認知症のお年寄りと会話できるほうが、これからの日本では使えるスペックだと、私は強く主張します!


外でこんなアクティブなご老人に出会ったら、もしかしたら認知症の方かも?


人生は生きてるだけで丸儲け!

— 介護している側で学ぶことが多いとして、介護されている側の老人はどう感じているんでしょうね?

金山 なんとなくですけど、「認知症や寝たきり老人は人生で一番楽しい時間を過ごしている」と思っています。これ、身体や思考能力が思うようにいかなくなった人たちへの気を使った労りの言葉じゃないですよ。本気で「10代20代より楽しいだろうな」って思います。まさに今人生の花火を出し惜しみせずにドカンドカン打ち上げている感じ。

— 『*2 恍惚の人』なんて作品もありましたね。
*2『恍惚の人』:いち早く「認知症」について取り上げた、有吉佐和子の長編小説。1972年に発売され、その年の年間売上第一位で194万部を売り上げた大ベストセラー作品。翌年1973年は「福祉元年」と呼ばれ、田中角栄内閣により「老人医療費無料制度」が創設された。(1983年の「老人保健法」施行により無料制度は廃止)

金山 よく、寝たきりや認知症になるなら、いっそぽっくり逝きたいって言う人がいますけど私はイヤですね。寝たきりになろうが認知症になろうが、周りに迷惑をかけまくって1秒でも長生きしてやりますよ! 花火は1発でも多く打ち上げたモン勝ちだと思ってますから!

— いやあ、説得力がありますね。というわけで前編はこのあたりで。次回は実際の金山さんの介護経験から、介護の現実をうかがいたいと思います。単行本化のため、興味が湧いたらぜひ電子書籍版を買ってくださいね!

金山 よろしくお願いします!!


『介護小学生』(金山カメ)

『介護小学生』本編と、インタビューの後編は12月9日掲載予定!!

小学生のときに祖父母の介護を経験した作者の涙と笑いのW介護エッセイ漫画!

この連載について

介護小学生

金山カメ

小学校が終わった放課後、友達と遊ぶこともせず、寝たきりのじーちゃんと認知症のばーちゃんを1人で看ていた介護小学生が体験した在宅介護の現実。涙と笑いのW介護エッセイ漫画!

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