経済的に「生かされる」老人たち 五木×古市対談【第2回】

五木寛之さん『嫌老社会を超えて』発売記念、社会学者の古市憲寿さんとの対談第二回です。年々上がり続ける高齢者の社会保障費。この問題に対して、今年83歳になった五木さんはどう考えているのでしょうか?

経済的に「生かされる」老人たち

五木寛之(以下、五木) 一〇〇歳超えの日本人も増えたけれど、大半が要介護で、「植物状態」で生きている人たちもかなりの比率を占める、という現実も見ておく必要があると思うんですが。

古市憲寿(以下、古市) 「延命」されている人たちですね。

五木 もちろん、「自分の意識がなくなっても、生かしておいてくれ」という人はいるだろうし、家族が「一日でも長く」と願う場合も多いでしょう。ただ、同時にそこには「経済」が絡んでいることを、見逃すわけにはいかないと思うのです。終末医療は、べらぼうにお金がかかる。見方を変えると、そこで成り立っているビジネスもあるんですね。寝たきりで、胃ろうで栄養を取っているような入院患者が何人かいれば、という話もあるくらい。だから、できうる限りの手を尽くして、延命するケースもでてくるわけでしょう。これがアメリカなどだと、終末医療の施設に入ったら、三ヵ月とか半年くらいで亡くなっていくそうです。患者が自力で食べなくなったら、スプーンで無理やり口に押し込んだりしない。水を飲めなくなったら、そのままにする。

古市 自然に任せて、天寿を全うしてもらうということですね。

五木 ところが私たちの国では、意識がなくなっても、食べられなくても、何年も「お迎え」に来てもらえないことがあるわけです。考えてみれば、日本の高齢者もつらい存在です。若い頃は、世界に冠たる長時間労働で経済発展に貢献したのに、寝たきりになってからも、また別の「需要」を満たすために「生かされる」のですから。

古市 確かに、消費税が五%から段階的に一〇%に引き上げられることになっていますけど、上がる五%のうち若者世代に回るのはたった〇・三%です。「将来世代のための増税」を謳いながら、増税分のほとんどは、高齢者の社会保障費に振り向けられるんです。また、一〇〇歳のお年寄り一人に、税金が年五〇〇万円投入されているという試算もあります。いいか悪いかは別にして、高齢者に「お金がかかる」のは事実です。

五木 間違いなく、みなさんの想像をはるかに超えるお金がかかっている。あからさまに言ってしまうと、そういう実情を知った若い人たちから「どうして植物状態のような老人たちのために、俺たちが給料の中から天引きされて負担しなくてはいけないんだ」という声が澎湃ほうはいと沸き起こっても、おかしくないと思うのです。

古市 最近、予防医学の先生から聞いた話なのですが、ちょうど五木さん世代以上の、戦争経験のある高齢者は、真面目で我慢強くて、お医者さんの言うことをよく聞いてくれるそうです。食事も運動も、とにかく言われた通りにする。だから、健康で長生きする人が多いのだといいます。ところがその下の、団塊世代くらいになってくると、「不真面目」な人が増えてきて、なかなか医者の指示を守ってくれない(笑)。例えば二〇年後に、日本人が今のような長寿を保っているのかどうかは分からない、とその先生はおっしゃっていました。

五木 なるほど。「駆除」するまでもなく、老人大量死の時代が来るかもしれない。

「老衰」を認めよ
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五木寛之×古市憲寿「嫌老」の時代に

五木寛之

100歳以上の高齢者数、6万人。2050年には68万人に達するとも。急速に進む超高齢化社会に不安や違和感を持つ人も増えています。作家・五木氏はそんな違和感を「嫌老感」と表現。『嫌老社会を超えて』を上梓しました。最終章では若手代表として...もっと読む

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コメント

Lave_chamo これから上がる5%のうち若者世代に回るのはたった0.3%です。「将来世代のための増税」を謳いながら増税分のほとんどは高齢者の社会保障費に振り向けられる 4年弱前 replyretweetfavorite

consaba 「五木さんは、死を意識することってあるんですか?」  #ジレンマ 4年弱前 replyretweetfavorite

chidori1079 「戦前と戦後は目標が戦争勝利から経済成長に変わっただけで国の姿は大きく変わってない」ってのはなるほどそうかもと思う。 4年弱前 replyretweetfavorite

iammeiden 五木寛之 「今、戦前の雰囲気だ」ってよく言われるんだけど、ぜんぜん違いますよ。「国益を守るために、中国と一戦交えろ」「韓国を攻撃せよ」という大衆的な熱狂や世論の高まりが、今の日本にありますか? https://t.co/rUIlNCaJA9 4年弱前 replyretweetfavorite