ビール税一本化見送りの悲劇。ベルギービールにまつわる誤解とは

「発泡酒」と表記されてしまうことが多いベルギービール。しかし、普通のビールの模造品というイメージを持ってしまうのは誤解だそうです。多彩なラインナップを誇る自由なベルギービールは、一体どのように造られているのでしょうか? 
ビールのプロであるビアライター・ビアソムリエの富江弘幸さんがお教えするユニークなベルギービールの世界をお楽しみください。

ビール類の税額一本化見送り

今回はベルギービールの紹介をしたいのですが、その前にひとつ非常に残念なニュースがありました。

ビール類の税額を一律55円にするという改正を、2017年度以降に見送ったというニュースです。つまり、現在の1缶(350ml)当たりビール約77円、発泡酒約47円、第3のビール約28円という税額の一本化が遠のいたのです。

発泡酒や第3のビールをよく飲まれている方にとっては、値上げになるのに何が残念なのかと思われるかもしれません。しかし、長い目で見ると早くビール類の税額を一本化したほうがいい、と考えています。なぜなら、酒税法の抜け道を探して税額の低い商品を造りたい企業と、税収を上げたい国とのイタチごっこが終わるからです。

イタチごっこが終わるということは、「ビールに似たような味のお酒」を造らなくてもいいということ。発泡酒も第3のビールも、企業努力でビールに近い味わいのものもありますが、原料や造り方を変えることで税額を安くしているため、やはり味の面ではビールにかなわないと思っています。

よりおいしいビールが、発泡酒より1缶あたり数円高い程度まで値下げになるのであれば、消費者にとってはいいことですよね。「ビールの味にどれだけ近づけるか」という企業努力よりも、「ビールをどれだけおいしくするか」という企業努力のほうが、消費者にとってハッピーなはずです。これが見送られたというのは非常に残念です。

ベルギービールも発泡酒?

さて、そこでベルギービールの話です。

みなさんは、ベルギービールについてどんなイメージがあるでしょうか。ベルギーはドイツと並んでビールで有名な国だという印象を持っている方も多いでしょう。しかし、中にはこんなイメージを持つ方もいます。

「ベルギービールって発泡酒なんでしょ?」

ベルギービールのインポーターやお店の方は、お客様からこんな質問をされることがあると言います。ベルギービールのボトルを見てみると、確かに「発泡酒」と書かれていることがあります。「ベタ惚れビールに出会うための5スタイル×3銘柄」で紹介した「ヒューガルデン・ホワイト」も発泡酒です。

実は、これがベルギービールの特徴のひとつでもあるのですが、日本では多くのベルギービールが「発泡酒」と表示されています。これはなぜでしょうか。

実は、日本の酒税法では、2種類の発泡酒があるのです。

・麦芽の使用比率を3分の2未満にすることで税額を安くした「ビールに似たような味のお酒」である発泡酒
・麦芽の使用比率が3分の2以上でも、酒税法でビールの原料として認められていないもの(フルーツなど)を使用することでビールを名乗れない発泡酒

「発泡酒」と表記されているベルギービールの多くは後者です。「ヒューガルデン・ホワイト」や「ヴェデット・エクストラホワイト」のようなベルギーの白ビール(ベルジャン・ホワイト)は、原料にオレンジピールやコリアンダーなど、日本の酒税法ではビールを名乗れない原料を使用しているため、発泡酒と表示せざるを得ないのです。白ビール以外でも、フルーツをはじめナツメグといったスパイスなど、さまざまな副原料を使用するビールがあり、それらも発泡酒となってしまいます(もちろん、麦芽100%のベルギービールもあります)。

【 セット 販売 】 VEDETT EXTRA WHITE ( ヴェデット・エクストラ ホワイト ) 4.7度 330ml 6本 セット
VEDETT EXTRA WHITE ( ヴェデット・エクストラ ホワイト ) 「ヴェデット・エクストラホワイト」は、「ヒューガルデン・ホワイト」よりもすっきりとした味わい。オレンジとコリアンダーの軽い風味もある。

さらに残念なことに、後者の発泡酒の税額はビールと同じ1缶あたり約77円です。「発泡酒」という呼称で「ビールに似せた味のお酒」という印象をつけられた上に、税額も高い(ビールと同じ)という非常に残念な立場にあるのが、現在のベルギービール。
なので、冒頭で述べた税額の一本化(つまり発泡酒と表示されているベルギービールにとっては減税)が見送られたという話は、ベルギービール好きや関係者にとっては非常に残念な話なのです。

ベルギーでしか造れないビール

日本の話に戻りますが、ビール類の税額が一本化されれば、流通する国産ビールが多様化するのではないかという期待もあります。フルーツやスパイスを使っても発泡酒ではなくビールと表示できるのであれば、ビール造りの幅が広がるからです。

しかし、いくら国産ビールが多様化しても、ベルギーでしか造れないビールがあります。それがランビックというスタイルのビールです。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
あなたのしらない、おいしいビール

富江弘幸

「地ビール解禁」から早20年、今や「クラフトビール」が世をにぎわせ、コンビニで珍しいビールが並び、ビール専門店が急増してきました。見慣れない銘柄があふれかえる中、ビールのプロであるビアライター・ビアソムリエの富江弘幸さんによる連載がス...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

saoriarai ランビック飲みたいね 2年以上前 replyretweetfavorite

myogasoup ヒューガルデンが発泡酒って気にしたことなかったな > 3年以上前 replyretweetfavorite