A.荒岩家の食卓を支えているのは、驚異の「食材もらいもの運」! 食材を引き寄せるのはクッキングパパの人徳か、食運か、超能力か!?
巨大食材料理や豪華なパーティ料理など、お金がかかっていそうなイメージがあるクッキングパパの料理。人を招いて料理をふるまうことも多いので、荒岩家の月々の食費は相当高くついていそう。
連載開始当初は好景気に沸くバブルの時代であり、地元の有名企業で共働きの荒岩家(荒岩は商社・金丸産業、妻虹子はニチフク新聞の記者)は、裕福というわけではないが、金銭的に余裕がなかったわけではないだろう。とはいえ、クリスマスのローストビーフを作るのにサラッと1万円の肉を買ったり、軽いノリで7千円の車エビを買ったりする姿を見ると、こんなに贅沢な料理ばかり作っていて、荒岩の家計は大丈夫なのか……と余計な心配をしてしまう。
「たまにはぜいたくしようぜ」と誘惑する荒岩©うえやまとち/講談社
7千円の海老は、この後贅沢にもカレーにぶっ込まれていました……©うえやまとち/講談社
しかし、荒岩の料理は贅沢なばかりではない。
近所に住む部下梅田の妻であり、お嬢さま育ちで金銭感覚がぶっ飛びぎみのギャル主婦、ユミちゃんがお金に困っていたときには、安くて新鮮な食材が買える荒岩のなじみの商店街を教えてあげたり、冷蔵庫の残りものをアレンジして作る「ミックスフライ」を教えたりしている。
そういうところを見ると、荒岩は節約メニューにも精通しているようだ。
小学生のときからシングルマザーの母親に代わって料理をしてきた荒岩のしっかりした金銭感覚を感じる。そうだよね、たまのぜいたくも日々の節約があるからだよね! と庶民の私が読んでいても頼もしい。
主婦初心者のユミちゃんに家庭料理の神髄である「冷蔵庫の残り物でできる料理」を伝授する荒岩©うえやまとち/講談社
魚をもらう! 野菜をもらう! タコを、イカを、カニをもらい、果ては高級中華食材が空輸で送りつけられる! 荒岩のもらいもの運は強力!
荒岩家の豪華な食卓を支える要素が、もうひとつある。
それは、荒岩家が普通なら考えられないほど「食材もらいもの運」がよいということ。
以前紹介したように、荒岩の料理の腕前を知っている人々は、巨大食材を持て余すと荒岩の家に持ってきたり送りつけたりするという暗黙のルールがあるようで、荒岩はこのルールにより巨大タコ、イカなどを手に入れている。
しかし、荒岩の食材のもらいっぷりは、こんなものでは済まないのだ。 荒岩自身が釣りなどのレジャーを通して知り合った友人や、妻虹子が取材に行った先でお世話になった人から全国のおいしい海産物などを送ってもらう、なんていうことはよくあること。
あるときなどは香港に住む友人の妹・シンディから干しアワビ・フカヒレ・貝柱・海燕の巣などの高級中華食材が送られてきたこともある。うらやましい……と思う反面、正直巨大食材や生の海産物、高級中華乾物をいただいても、私のようなお粗末な料理の腕では困り果ててしまうだろう。
香港から送られてきた高級中華食材。日本で買ったら数万円は下らない©うえやまとち/講談社
こんなにも色々なところから食材をもらえるというのは、社交的で面倒見のよい荒岩家が普段から多くの人に料理をふるまってきた日々の行いのたまものであり、巨大な食材などの始末に困るものを送りつけても荒岩家ならおいしく楽しく食べてくれるだろうという信頼感のなせるワザだろう。
そしてもうひとつ、荒岩家の食費を助けてくれる不思議な偶然がある。
周りの人が荒岩家に都合よく食材を提供してくれるように変化するという現象だ。
まず、荒岩の部下・メガネさん(本名は不明)。社内でメガネさんは荒岩より年上ながら、荒岩のサポートに回ってくれる、頼れるよき部下だった。また無類の釣り好きでもあり、以前からたくさん魚が釣れたときには荒岩家に差し入れしてくれていた。しかしあるときメガネさんは、妻の実家の養豚業を継ぐために退職してしまう。そう、それからというもの、肉と魚両方を荒岩家にさし入れてくれるようになるのである。
これは荒岩痛恨の留守、メガネさんの風呂敷の中身は豚のスペアリブ©うえやまとち/講談社
そしてもうひとり、変化を遂げた人物がいる。
さきほどのギャル主婦ユミちゃんが、意外にも畑に目覚めるのである。
金銭感覚がぶっ飛んでいて、デパートでしか買い物せず、晩飯にケーキを作り、エアロビクスに通う80年代のギャルであった彼女が、ミニスカートを脱ぎ捨ててつなぎと麦わら帽子を装備して、畑で野菜を作るのを一番の趣味とするようになるのである。そうしたらどうなるかというと、もちろん収穫のおすそわけは荒岩家へ。なんだろうか、この荒岩家にとってありがたすぎる変化は……。
巨大ズッキーニを収穫し、荒岩家に届けるユミちゃん。ズッキーニの登場音もCOOL©うえやまとち/講談社
これで魚、肉、野菜と、ほぼすべての食材がもらいもので賄えるような知人がそろってしまった。
残すは米ぐらいだが、これも荒岩は知り合いの農家のおじいさん「政さん」の稲刈りを荒岩一家総出で手伝い、そのお礼として新米を送ってもらったりしている。稲刈りをレジャーとして楽しみ、おいしい新米をもらう。死角がなさ過ぎて怖いくらいだ。