ジェニファー・ローレンスが告発したハリウッドの「男女差別」
日本よりも男女平等が進んでいるとみなされているアメリカだが、いまだに職場や学問の場での性差別はあるし、収入の格差も解消していない。
統計で明らかな「男女の収入格差」については、よく次のような反論を耳にする。
1. 高学歴で専門職の男性のほうが女性より多いからだ(同じ職なら同じ給与のはずだ)
2. 女性は妊娠出産でキャリアがとだえるからだ
3. 女性は子どもが病気になると欠勤、早退をするからだ
4. 女性は男性に比べて安月給の仕事/パートタイムの仕事を選ぶ傾向があるからだ
5. (結局女が悪いのだ)
「同じ職で、同じ能力であれば、男女差はない」と(固く)信じている男性は少なくない。
だが、それを覆す事実は探せばいくらでもある。
女優のジェニファー・ローレンスがLennyというニュースレターに「Why Do I Make Less Than My Male Co‑Stars?(なぜ、私の給与は共演した男優より少ないの?)」という本音を寄稿したところ、リベラルで知られるハリウッドにも男女の不公平な報酬格差があるという驚きの事実が全世界に広まった。Lennyとは、20代の若さで女優、脚本家、映画プロデューサー、映画監督として活躍しているレナ・ダナムがフェミニズムや政治を語るために始めたニュースレターである。
ジェニファーは、先日SPE(ソニーピクチャーズエンターテイメント)内部のEメールがハッキングによって流出したことで、『アメリカン・ハッスル』で共演した男優のブラッドリー・クーパーとクリスチャン・ベールが、自分や共演女優のエイミー・アダムスよりもはるかに多くの報酬を得ていたのを初めて知った。この映画では、主演男優がクリスチャン・ベールで主演女優はエイミー・アダムス、助演男優がブラッドリー・クーパーで助演女優がジェニファー・ローレンスということになっているが、全員が同等に重要な役柄であり、最も活躍する場面が多かったのはエイミー・アダムスだ。ゴールデングローブ賞では、男優陣がノミネートで終わったのに対し、エイミーとジェニファーはそれぞれ主演女優賞と助演女優賞を受賞した。
また、ジェニファー・ローレンスは、若いながらもすでにアカデミー賞受賞したベテランで、何よりもチケットを売ることにかけては全米トップだ。
映画公開の前に行われたナンタケット映画祭の対談イベントで、『アメリカン・ハッスル』のディヴィッド・O・ラッセル監督は、「ジェニファー・ローレンスがいかに特別な女優なのか」を熱く語った。それ以外のことをほとんど話さなかったくらいで、ジェニファーの才能に惚れ込んでいるのは明らかだった。
左がディヴィッド・O・ラッセル監督、右が政治解説者のクリス・マシューズ
実力でも、経済的効果でも、共演した男優と同等であることは間違いない。
なのに、『アメリカン・ハッスル』の契約では、「バックエンド」と呼ばれるロイヤリティ率がブラッドリーとクリスチャンの場合は9%だったのに対して、ジェニファーとエイミーは7%でしかなかったのだ。
これを知ったとき、ジェニファーは、共演した男優たちが、ただ単に「男だ」というだけで自分よりはるかに報酬が多いことに驚き、腹を立てた。しかし、憤りの対象はSPEではない。男性のように強く交渉せずにさっさと妥協した自分のほうだったという。
収入格差は女性が交渉下手なせいなのか?
けれども、男性のように強気の交渉をしない女性のほうが悪いのだろうか?