エンジニアにも、伝統工芸の職人にも。生徒全員が出口を見つけられるように
—— 正式な通信制高校である以上、教科書は文部科学省検定済のものを使うことになりますよね。けれど、カリキュラムは相当、ニコニコ的なものになるのでしょうか。
川上量生(以下、川上) そうですね。ぼくらがつくるからには、普通の高校にはしないつもりです。
角川歴彦(以下、角川) 教科書の表紙が全部、ライトノベルみたいなイラストだったり?(笑)
川上 そういうこともするかもしれませんが(笑)、どうせならラノベ作家を養成するコースをつくりたいということで、現役のラノベの先生による課外授業を実施します。あとはKADOKAWAグループの電撃文庫の編集者がコミック作家になるノウハウを教えたりします。
角川 じゃあ、音楽の授業だったら、初音ミクとかのボーカロイドの音楽を作曲する、みたいな授業もでてきたり。
川上 それもいいですね。ボーカロイドを開発した人が、講師として直接教えてくれる、なんてこともあると思います。あと将棋部だって、ぼくらがつくるとすごく豪華な将棋部ができると思うんですよ(笑)。
角川 おもしろそうだねえ。期待がふくらむな。
—— 最近では、学校におけるあらゆる教育がキャリア教育であるべき、という考えもありますが、キャリア教育についてはどうお考えですか?
川上 キャリア教育というか、そこで言っているのは社会で役立つ実用的な教育、ということですよね。教養教育ではなくて。ぼくは、教養は大切だと思っています。
でも、今の学校教育では、現代に必要な教養を教えていないと思うんです。そこを、ぼくらはサポートしたいんです。そして、実用的な教育というのも、単純に専門知識だけを教えるなら専門学校でいいですよね。でも、ぼくらがつくるのは、高校なんです。この高校では、新しいネット時代の教養が身につく。それはきっと、将来のキャリアにも役立つはずです。その“教養”の一つの例として、生徒全員にプログラミングを学べるコースを用意したいと思っています。
角川 それは大事だね。
川上 プログラミングやウェブデザインなどをひと通り学べば、今の時代は食っていけますよ。ちゃんと身につければね。
角川 そう考えると、この時代に学校でプログラミングを教えないで、企業に入ってから教えようとするのは、おかしいよね。N高は、時代の要請に応えた学校になると思います。
—— この高校でプログラミングを極める子が出てきたら、大学に行く必要はなくて、いきなり就職するということもあり得ますよね。
川上 実際、ドワンゴのエンジニアって高卒で主力になっている人が多いんですよ。実力あるエンジニアは、高卒のほうが有利ですよね。プロ野球と一緒です。一方で、日本の各地方で後継者がいなくて困っている職業を、生徒に紹介する仕組みをつくろうと思っているんです。それはもしかしたら、伝統工芸の職人かもしれない。ITに関連する仕事も伝統的な仕事も、両方紹介して、最終的にみんなが出口を見つけられる高校にしたいんです。もちろん、大学に進学したい人のために、勉強のカリキュラムも充実させます。
角川 「地方創生」という目的にもかなっている学校だと言えるね。
これからの教育のあるべき姿を先取りする
川上 今は何でも東京に集中してしまいますが、この高校は地方にいながらみんなで学べる学校なんです。それはやっぱり、ネットがあるから実現できる。ネットって、ある意味「逆転の場所」でもあるんですよ。