生姜は、3世紀ごろに中国から伝わったといわれています。かつては「はじかみ」などとよばれていました。いまも、焼き魚の薬味としてそえられる酢漬けの筆生姜を「はじかみ」と呼びますね。彩の美しさだけではなく、酢の効果もあいまって、魚による食あたりを防ぐことが期待されています。
生姜は、食べ物なのに“薬”と書く「薬味」として、おなじみの素材。薬味はもともと中国の医学用語だったそうですが、日本でも、生姜は江戸時代に食材として広まる以前、長らく薬として用いられていました。胃の働きをよくしたり、発汗効果を高めたり、さまざまな効能があるとされ、いまでも漢方では欠かせない生薬です。
生姜といえば、とくに女性は、体の冷えを改善する効果に期待してしまいますね。生姜の辛味成分には、体を温める力があります。なかでも多い成分がジンゲロール。そして、加熱や乾燥などによって増えるのがショウガオールです。じつはこの2つの成分、体の温め方に大きなちがいがあります。
ジンゲロールは、手や足先などを温め、そちらに熱を送るため、体の内部は冷えてしまいます。ショウガオールは、胃腸を刺激して血の流れをよくし、全身を深いところから温めます。これを知らずに、体を温めようと生の生姜をたくさん食べると、逆効果になってしまうというわけです。漢方でも、生の「生姜ショウキョウ」と蒸して乾燥させた「乾姜カンキョウ」は別物。処方する症状がちがうのです。