もし、同性どうしで子どもをつくれるとしたら?

同性のパートナーと愛しあいながらも、同性どうしだと子供をのこすことができないことに悩んでいる人は少なくありません。しかし実はiPS細胞技術の発展により、近い将来、同性間生殖も可能になるといわれています。ある日、牧村朝子さんのもとに舞い込んだのは、「生まれるかもしれない子どもに会える」というアートプロジェクトへの参加依頼で……。先日NHKのドキュメンタリーで放送されたプロジェクトの内容を、牧村さんがつづった日記をもとに、cakesでもお届けしていきます。

2015/03/07

今日、はじめて、「妻と私の子どもの顔が半年後に見られるかもしれない」ということを聞かされた。

もちろん、妊娠が発覚したって話じゃない。DNAを元にしたシミュレーションの話だ。妻と私の唾液をそれぞれ取って、DNAデータを解析し、そこからふたりの赤ちゃんの顔をシミュレーションするらしい。

そんな話を聞いただけで、私は妊娠したみたいな気分になった。私は妻を愛しているし、妻のようなすばらしい人間のDNAを次世代に継ぎたいと思っている。

だから、妻と抱き合うたびに思ってきた。

「これで私のお腹に、妻と私の子どもが宿ったらどんなにいいだろう」って。

そんなことが起こりえないのは分かっているし、それでも妻と一緒に生きていこうというのは私自身の選択だ。だけれど、心の片隅で妻との子どもを望んでしまう気持ちを、そしていつか妻が死んで私だけこの世に取り残されることへの不安を、私は、拭い去りきれずにいた。

今回のことで妻と私は、実際に子どもを授かれるわけではない。だけれど子どもの顔が見られるかもしれないというだけで、私の心は明るくなった。両親に孫の顔を見せる、っていうことが、私にもできるのかもしれない。それは「孫の顔を見せる」っていう文字通りのことであって、それ以上でもそれ以下でもないのだけれど……それでも。

妻は今、日本に出張中だ。私は今、妻の実家にひとりで来ている。今回のプロジェクトのことは妻の両親にも、私の両親にも話してから進めた方がいいだろう。それぞれの両親に知らせる前に、まずは妻に話すことにした。……と、ここまで書いてまた、私は妊娠したみたいな気分になっている。さっきの一文の「プロジェクト」を「妊娠」に置き換えても、なんとなく文章の意味が通ってしまうではないか。

17年前、10歳の時、女の子に初恋をしたあの日のことを思い出している。

17年後、27歳になって、「愛する妻と自分の子どもが見られるかもしれない」なんて未来を生きているとは考えてもみなかったあの頃。

未来ってやつは、ほんとうに、くるのだ。

2015/03/08
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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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sizukanarudon 牧村朝子@makimuuuuuu https://t.co/YPu2ISaL0O ハートネットTVブレイクスルー 会えるはずなかった私の子どもへ http://t.co/mg8jfYAgHG 3年以上前 replyretweetfavorite

makimuuuuuu 本日再放送の #ハートネットTV でもご紹介した、長谷川愛さんによるアートプロジェクト。制作中の日記を公開しました↓ https://t.co/RmYCKXsc9D #nhk_heart http://t.co/k7aFgSKRKg 3年以上前 replyretweetfavorite

unnaturalwoman |女と結婚した女だけど質問ある?|牧村朝子 @makimuuuuuu |cakes(ケイクス) すばらしいテキスト。 https://t.co/RUrjnyP09b 3年以上前 replyretweetfavorite

Ai__Hasegawa 牧村朝子さんの(im)possible babyの日記がここhttp://t.co/YfU9bmDMedで読めます 3年以上前 replyretweetfavorite