アメリカのビールが世界を席巻している
今日はこんなビールを飲んでいます。
コロナド・ブルーイングのアイランダーIPAです。栓を開けると同時に香るシトラス(柑橘系)、口の中で広がっていくグレープフルーツやトロピカルフルーツを思わせるフレーバー……。グレープフルーツの白い皮のような苦味もクセになります。いかにもアメリカを代表するIPAといったビールです。
アメリカンIPAの代表的銘柄のひとつ、アイランダーIPA。
アメリカのビールと聞くと、バドワイザーやミラー、クアーズといった、色が薄くてすっきりした喉越しのビールを思い浮かべるかもしれません。
バドワイザーはすっきりした喉越しのアメリカンラガー。
しかし、いま世界を動かしているのは、アイランダーIPAに代表されるような、「シトラスの香りと強い苦味」が特徴のアメリカンIPAなのです。
世界を動かしているとはどういうことでしょうか。
簡単に言うと、世界がアメリカンIPAの虜になっているのです。アメリカ産のIPAが世界中で飲まれているだけでなく、各国で「アメリカンIPA」というスタイルのビールを造るようになっています。
アメリカンIPAの歴史はまだ数十年。しかし、何百年も伝統的なビールを飲み続けている国でも、アメリカンIPAにハマる人たちが多いのです。イギリスではブリュードッグがIPAを造り、ベルギーではアメリカの醸造所とコラボしたベルジャンコーストIPAというビールも人気になっています。
スタイルについては「ベタ惚れビールに出会うための5スタイル×3銘柄」でも説明しましたが、そもそもIPA「インディア・ペールエール(India Pale Ale)」とは、ホップを大量に使い、フルーティーな香りと苦味が効いた、アルコール度数の高いビールです。アメリカンIPAは、後でくわしく説明しますが、柑橘の風味が強いアメリカ産のホップを使っているのが特徴なのです。
もちろん、日本のいわゆるクラフトビールを造る醸造所も、その多くがIPAを造っています。大手のキリンビールも、期間限定ですが「グランドキリン ギャラクシーホップ」「グランドキリン 十六夜の月」というIPAを販売しています。グランドキリンのIPAは正確にいうとアメリカンIPAではないのですが、元をたどれば、アメリカが造るIPAに影響を受けたものと言えるでしょう。
世界一を決めるワールドビアカップ
そのアメリカで2年に一度開催されているワールドビアカップというコンテストがあります。スタイルごとのビール世界一を決めるコンテストで、年々エントリー数は増えており、前回の2014年には58カ国、1403軒の醸造所から、4754銘柄のビールがエントリーされました。
そこで、中規模部門のチャンピオンブルワリーに選ばれたのが「コロナド・ブルーイング」、そしてアメリカンスタイル・ストロングペールエールという部門で金賞を受賞したのが、冒頭でご紹介した「アイランダーIPA」です。
そもそもアメリカで開催されていることもあって、アメリカの醸造所のエントリー数が多いということもありますが、アメリカの受賞数はダントツ。そういった意味では、アメリカはビール先進国と言っていいでしょう。
ちなみに、日本からは「コンビニやスーパーで買える『My定番』ビール4選」で紹介したコエドブルワリーの「COEDO伽羅-Kyara-」、そして富士桜高原麦酒の「ヴァイツェン」、アサヒの「スーパードライ」の3銘柄が受賞しています。
アメリカがビールに目覚めた3つの転換点
アメリカはビールの伝統国ではありません。ベルギーやドイツなどヨーロッパの伝統国に比べると、国もビールも歴史は浅いです。その歴史の中で、ビール先進国となっていった転換点が3つあります。
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