本物の「ましゃロス」は開示されない
このところ、それなりに年を重ねた人気俳優が結婚を発表する度に「ショックで早退した女性ファン」の存在が面白おかしく取り上げられるようになったが、私はアレを疑っている。なぜならばどこまでも心酔しているファンは、その過度な愛情を職場で認知されている可能性が高く、むしろ素直には早退を申し出られないはず。親しい同僚にはSNSのアカウントも把握されているだろう。しかし、今回の福山雅治結婚がこれまでの事例と異なるのは、マスコミにFAXを送る10分前にファンクラブ限定ページで結婚の事実を報告していることだ。
空白の10分間。西村京太郎作品ならば、停車時間を利用して、5番ホームに停車している特急列車のトイレで人を絞め殺し、何食わぬ顔で1番ホームの列車に戻ることが可能である。FAXを送ってから各局が報じるまでの時間もあるから、10分前に報告を受けて、誰にも察知されないように素早く上司に早退を申し出て、会社を抜け出たファンもいたはず。真なるファンであればあるほど、誰にも「ましゃロス」だと気付かれずに仕事場を後にしたのではないか。となれば、メディアに可視化された「ましゃロス」など所詮半端者で、本物は、上司に「そういえば、さっき佐藤さんが体調不良で早退したけど、畳み掛けるように福山雅治が結婚って、これじゃあ、ますます体調崩しちゃうかもね」と心配されていたのではないか。この状態こそ「ましゃロス」である。つまり、本物の「ましゃロス」は可視化されていないのだ。
「福山さんならば選び放題だったんだと思うんですよ」
昨年末に、恒例のライブ企画「冬の大感謝祭」の1日を男性客限定で開催したものの、「動員目標数の1万8000人には届かなかった。98年に開始した『冬の大感謝祭』で、チケットが完売しなかったのは初めて」(スポニチアネックス)という結果に終わった。大手スポーツ紙にこういった報じ方を許すところに器の大きさを感じるが、ましゃが元々ロスしている多くの男性は、女性陣からの圧倒的な人気を前にして批判はおろか、「特に興味が涌かないよねー」とすら言及することを控えてきた。私も、もう10年も前に「ってゆうか、あの人、いつからカメラマン気取り出したんだ?」という発言に端を発する小競り合いを起こして以降、福山雅治について言及することに慎重になってきた。
別の原稿を記しながら各局のワイドショーをザッピングしていたので、番組名も発言者もメモしそびれてしまったのだが、「福山さんならば選び放題だったんだと思うんですよ……」と茶化す男性コメンテーターの声が聞こえてきた。なかなか微妙なニュアンスを含むこのフレーズを聞くのは、15年振り2度目のことである。15年前に聞こえた「キムタクならば選び放題だったはず」という発言は、選んだ相手に対する曇りがかった印象がダダ漏れになっていたわけだが、今回もまたその発言が適用されるとは思わなかった。
榎本加奈子、中山エミリ、矢田亜希子、山口紗弥加、吹石一恵
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