英雄の書

失敗を恐れるな!失敗こそが脳を進化させる

気鋭の人工知能科学者・黒川伊保子さんが、脳科学を元に解明した「人生を切り開く方法」をまとめた『英雄の書』。これから社会へ踏み出そうとする人へのはなむけ、社会で奮闘する人を勇気付ける言葉に溢れている。その中から、「失敗」に対する心構えや「失敗」を恐れてはいけない理由を脳科学の切り口から語った部分を掲載します。

はじめに—狼の口の中へ

 イタリア人は、試合や試験に挑む人へ、こう声をかけるのだそうだ。

In bocca al lupo!

 狼の口の中へ、という意味である。

 たとえば、サッカーで一点先取していながら、一点を取り返されたとき。イタリア人たちは「やっとゲームが始まった」と高揚し、「狼の口の中へ」飛び込んでいくのである。

 彼らにとって、ゲームとは「点を取って、取られて、取り返す」ことであって、「単に点を取る」ことじゃないからだ。

 ゲームは点を取り返されたときに始まる。

 レースは抜き返されたときに始まる。

 そう思える人は強い。

 点を取り返されたとき、「失敗した」と感じれば、まるでゲームが終わってしまったかのように動揺することになる。そうすると、重ねて点を取られてしまう。実際に、ゲームは終わってしまうのだ。

 抜き返されたとき、「失敗した」と感じれば、レースが終わってしまったかのように動揺することになる。そうすると、もうライバルを抜き返せない。実際に、レースが終わってしまうのである。

ゲームもレースも、挑む本人が「失敗した」と感じた瞬間に終わってしまう。

 人生だって、同じだ。

 日本人が「失敗」と呼ぶ事象のほとんどは、「人生をドラマティックにしてくれる、神様の演出」なのである。同じ事象を、「失敗」と呼ぶのと、「やっとドラマが始まった」と思うのとでは、天と地ほども違う

 単なる言語慣習の違いが、この国の若者を無駄に繊細にしてしまっている。

 国際化が重要と言われて久しいが、この国に必要なのは、語学力よりも、失敗を失敗とも思わない厚顔さなのではないかしら。

「失敗」がドラマの始まりであることを、脳科学を使って証明してあげたい。

「孤独」が脳の成熟に必要不可欠であることも、証明してあげたい。

 あなたが、英雄として歩き出すために。

あなたの人生は、あなたを主人公にしたものがたりなのである

 脳は、この世に生まれてきた以上、その脳だけの感性地図を描き続ける。同じ経験を持つ人が二人といないのだから、同じ脳神経回路を持つ人は二人といないのだ。だから、誰かの正解をなぞって満足するような脳なんて、この世にいないのである。

きみは、失敗を恐れるのだろうか。

「失敗したら恥ずかしい」と、一歩前に出るのを躊躇することが多いのだろうか。あるいは、してしまった失敗をくよくよ思いかえすのだろうか。そもそも「失敗」しないために、日々の努力を重ねているのだろうか。

 だとしたら、バカバカしい。今すぐ止めなさい。

「失敗」は、脳の成長のメカニズムの一環で、必要不可欠な頻出イベントなのだ。いちいち落ち込んでいたら、脳が疲弊してしまう。それはあれだね、おしっこする度に落ち込んでいるようなものだ。

 それでは、時空の果てまで届くような本来のきみの好奇心が萎えてしまい、日々の暮らしの中に埋もれてしまう。

「頭がいい」とは、どんな脳?
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英雄の書

黒川 伊保子
ポプラ社
2015-09-02

この連載について

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英雄の書

黒川伊保子

AI(人工知能)の研究を通して長年、人々の感性や嗜好・マーケットを分析してきた、脳科学者・黒川伊保子氏が語る、これから必要とされる人物像、「英雄」。なぜこれから「英雄」が必要とされるのか、「人生という冒険」の中で「英雄」になるために必...もっと読む

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コメント

haphopper 「この国に必要なのは、語学力よりも、 約4年前 replyretweetfavorite

k5concept 「失敗すれば、失敗に使われた脳の関連回路に電気信号が流れにくくなり、失敗する前より、失敗しにくい脳に変わるのだ。」失敗こそが脳を進化させる|黒川伊保子|cakes(ケイクス) https://t.co/CWNDQqRihl 約4年前 replyretweetfavorite

sizukanarudon 黒川伊保子 https://t.co/ySlD4Ht3hU 失敗すれば、失敗に使われた脳の関連回路に電気信号が流れにくくなり、失敗する前より、失敗しにくい脳に変わる。 逆に成功すれば、成功に使われた関連回路に電気信号が流れやすくなる。 約4年前 replyretweetfavorite

hazkkoi “国際化が重要と言われて久しいが、この国に必要なのは、語学力よりも、 約4年前 replyretweetfavorite