英雄の書

脳を進化させるための3つの掟

気鋭の人工知能科学者・黒川伊保子さんが、脳科学を元に解明した「人生を切り開く方法」をまとめた『英雄の書』。脳が成長するためには失敗は不可欠、「失敗は、無駄な回路を知るためのエクササイズ」という著者が、今回は睡眠が脳にどのような役割を果たすのか、その重要性と、脳を進化させるための3つの掟を語る。

眠りが「失敗」を「進化」に変える

私たちの脳、一日のうち、いつ進化しているかご存じだろうか。

それは、脳の持ち主が眠っている間である。

 起きている間、脳は、認知や思考や、その結果の出力に忙しくて、新しい知識の整合性を確かめ、回路に定着させる暇などないからだ。しかし、脳の持ち主が眠ると、意識領域の信号が沈静化し、表立った仕事がなくなる。そうなると、やっと脳は手が空いて、新しい知へと触手を伸ばすのだ。

 具体的には、起きている間の体験を何度も再生して、そこから知識や知恵を切り出す。過去の知識と引き比べて精査し、知識ベース全体の質も見直す。古い知識と統合して抽象化し、センスも作りだす。

 つまり、頭は眠っている間に進化するのである。

 人工知能では、これを脳の学習効果と呼ぶが、当然、座学で得た知識の定着だけを指すわけじゃない。人間関係の機微や、仕事のコツ、芸術や運動のセンスも、この方法で獲得し、脳に定着させていく。

 たとえば、昨日までできなかったドリブルをものにしたサッカー少年。眠るまでは、その体感も、筋肉制御の単純記憶にしか過ぎない。しかし、眠っている間に、脳が運動センスにまで昇華して、運動野に書き込んでいくのである。昼間の鍛錬が、夜の良い眠りによって、センスに変わる。

 したがって、鍛錬することと同じくらいに、眠ることも大事なのである。寸暇を惜しんで精進するのは構わないが、眠りをおろそかにしては元も子もない。

 英雄たちよ、どうか、眠りを大切にしてください。

眠りの質は、人生の質
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英雄の書

黒川 伊保子
ポプラ社
2015-09-02

この連載について

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英雄の書

黒川伊保子

AI(人工知能)の研究を通して長年、人々の感性や嗜好・マーケットを分析してきた、脳科学者・黒川伊保子氏が語る、これから必要とされる人物像、「英雄」。なぜこれから「英雄」が必要とされるのか、「人生という冒険」の中で「英雄」になるために必...もっと読む

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コメント

sizukanarudon 黒川伊保子 https://t.co/eyHXsNJDRl ホンマでっか!?TV 感性学評論家・黒川伊保子 https://t.co/5GsgZyyafo 5年弱前 replyretweetfavorite

elephant_0655 === なんと!厄介のことではないかッ!! ・・と思いながら読んでしまったよ #掟上今日子の備忘録 5年弱前 replyretweetfavorite