眠りが「失敗」を「進化」に変える
私たちの脳、一日のうち、いつ進化しているかご存じだろうか。
それは、脳の持ち主が眠っている間である。
起きている間、脳は、認知や思考や、その結果の出力に忙しくて、新しい知識の整合性を確かめ、回路に定着させる暇などないからだ。しかし、脳の持ち主が眠ると、意識領域の信号が沈静化し、表立った仕事がなくなる。そうなると、やっと脳は手が空いて、新しい知へと触手を伸ばすのだ。
具体的には、起きている間の体験を何度も再生して、そこから知識や知恵を切り出す。過去の知識と引き比べて精査し、知識ベース全体の質も見直す。古い知識と統合して抽象化し、センスも作りだす。
つまり、頭は眠っている間に進化するのである。
人工知能では、これを脳の学習効果と呼ぶが、当然、座学で得た知識の定着だけを指すわけじゃない。人間関係の機微や、仕事のコツ、芸術や運動のセンスも、この方法で獲得し、脳に定着させていく。
たとえば、昨日までできなかったドリブルをものにしたサッカー少年。眠るまでは、その体感も、筋肉制御の単純記憶にしか過ぎない。しかし、眠っている間に、脳が運動センスにまで昇華して、運動野に書き込んでいくのである。昼間の鍛錬が、夜の良い眠りによって、センスに変わる。
したがって、鍛錬することと同じくらいに、眠ることも大事なのである。寸暇を惜しんで精進するのは構わないが、眠りをおろそかにしては元も子もない。
英雄たちよ、どうか、眠りを大切にしてください。
眠りの質は、人生の質
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。