見た目は女子だけど、普通の女子とは違っていた
ノーマルな人に私のことをどう説明したらいいんだろう? 難しいね。
普段はレッテルを好まない私だけど、もしレッテルを貼るとすればジェンダー・クイアか、ジェンダー・ニュートラルか、あるいは単にクイアか。それから、私はインターセックス*1でもあるんだ。インターセックスは男性でもあるし女性でもある。あるいは男性でも女性でもないともいえる。男女とはまったく異なる性、第三の性なんだ。強いて言えばトランスジェンダーの一種ということになるかな。*1 インターセックスはいろいろな形で確認することが可能だ。性器によって、第二次性徴によって、あるいは染色体によって。男性と女性、両方の肉体的特徴を持っているのがインターセックスである(日本語では一般的に「半陰陽」と呼ばれることが多い)。外見的には男性か女性のどちらかに見えても、もうひとつの性を内側に抱えているのだ。
私の出生証明書には「女性」と記されている。たぶん、生まれたときは女に見えたんだろう。出生証明書にそう書かれていたら誰でも女だと思うよ。でも、それが常に真実とは限らないみたいなんだ。
お前は変わってるってよく言われるし、自分でもそう思う。中学時代には「怪物(フリーク)」って呼ばれたからね。あるいは「変人」とか。変わった怪物なんだよ!
私は女子にしては背が高くて、肩幅も広かった。見た目は確かに女子だけど、普通の女子とは違っていたんだ。ふるまいは男子のようだけど男子でもない。性に目覚める中2ぐらいになると、みんなは私をゲイかレズビアンと見なすようになった。
私を呼ぶときの代名詞には、本当は「彼ら《them》」を使ってもらいたいんだ。男と女の両方が自分の中にいると思うから。でも、それを理解できる人はほとんどいないので「彼」でいいよ。長い間ずっと「彼女」だったから、そろそろ交代してもいい時期だ。女子でいるのは好きじゃない。彼女とはお別れだ。しっくりこなかったしね。
子供のころ、私は美少女になりたいとも、ボーイッシュな美少女になりたいとも思わなかった。自分では普通の子供だと思ってたよ。夜寝て、朝起きてめしを食い、学校へ行って、黒板に落書きなんかして、家に帰ってめしを食って、寝る──その繰り返しだ。「今日の自分は可愛い」とか、「今日はボーイッシュな格好をしよう」なんてことも考えなかった。そういう記憶はまったくない
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