子供のころから変わり者
子供時代のぼくがダサい子だったか普通の子だったかといえば、まちがいなくダサい子だった。ニットのパンツとか、ジャージとか、カーゴパンツとか、コーデュロイとか、そんなのばっかり着てた。でも服のことはよく憶えてない。自分にとって重要なことじゃなかったから。
女の子らしい子供だったよ。ほんとに。バービー人形が好きだったし。周囲にまったく関心のない女の子だった。純真で、ファンタジー物語とか、そういった世界にのめりこんでた。
幼稚園のころはほかの子にお絵描きを教えようとしてたよ。みんなより絵が上手だと思ってたから。小学1年生くらいまでそんな感じだった。小学4年生のとき、英語の教科書を声を合わせて読まされたけど、ぼくはいっしょに読まなかった。ほかのみんなが遅すぎるから、自分だけ声を出さずに読んでたんだ。先生に当てられるとむかついた。
4年生までジーンズをはいたことがなくて、はくようになると、Tシャツのすそをジーンズの中に入れてた。ダサいよね。いとこにも「ダサーい」って言われた。 いとこにはいまだにダサいって言われる。つまり、ぼくは昔から変わり者だったんだ。5年生のとき、担任の先生が好きだった。そんな生徒はぼくだけで、その理由は、先生もぼくも作文好きだったから。ほかの生徒には作文が悩みの種だったみたいだけどね。
母に「今日はちがう人を見てるみたい」と言われたときは、ちょっとむかついた。
母がそう呼んだのは、カミングアウトする前のぼくのことだ。ぼくがその言葉にむかついたのは、母が人間そのものではなく、ジェンダーを見ていたからだ。
自分でも頭のいかれたやつだと思ってた
13歳のとき、自分がレズビアンだってことを両親に打ち明けた。ちょうど教会に出かけようとしていて、ちょっと遅刻しそうだったんだ。ぼくらが通うのはユニテリアン・ユニバーサリズム(*1)の教会だから、大事なお祈りのようなものはない。
*1 プロテスタントの流れをくんでいるが、多文化の伝統を尊重し、社会正義と人間の権利を重視したリベラルな立場を取る。
「ママ、パパ、ちょっと聞いてもらいたいことがあるんだけど」
「なんだ? もう出かけなきゃいけないんだぞ」
「わたし、レズビアンなんだ」
「わかった。さあ、車に乗りなさい」
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