ここは東京西新宿。
屑谷先輩「おい、出来内」
陽太「あっ、はい!先輩!! なんでしょうか!」
今日も今日とて、医療器具メーカー「ドブ板メディカル株式会社」の三年目営業、出来内陽太(デキナイ・ヨウタ)は5歳年上の先輩、屑谷(くずたに)に顎でコキ使われていました。
屑谷先輩「明日朝、千葉の病院に納品行ってもらいたいんだけどいい?」
陽太「え? 千葉ってまさかあの銚子の病院ですか?」
屑谷先輩「そうそう」
陽太「えっ、でもそれ先輩が担当で……」
屑谷先輩「あ?」
陽太がしどろもどろしていると、屑谷先輩はぎろりとにらみました。
屑谷先輩「このさ、病院はさ。俺が新卒の頃から担当してるの。本当だったら出来内が入社した時に、お前に担当替えてもらってもよかったんだよ?」
陽太「あ、い、いや……」
屑谷先輩「お前が手が回らないと思って俺が担当してるんだから手伝ってくれてもよくない?」
陽太「は、はあ……」
屑谷先輩「俺はね、明日午前中は医大の方で先生たちに新製品の説明しなきゃいけないの。出来内はさ、それができないから納品ばっかり担当させられてるんじゃないの? 商品が売れないんだったら、仕事選ぶべきじゃないよね」
陽太「……は、はい……」
屑谷先輩「じゃあよろしくね。あと、この伝票処理お願いね」
陽太「ええええ? は……はいぃぃぃ……」
屑谷先輩にまくしたてられて、陽太は涙目になりながら、書類の束をどさっと受け取ったのでした……。