第5回 年金と生命保険の話

いっこうに進展が見られない「年金問題」。そんな中、橋下徹大阪市長によって、新たな提案がなされました。今回は、知っているようで知らない「掛け捨て」と「経費率」について考えます。「掛け捨て」の代表である生命保険の経費率について考えたことがありますか。最初に経費ありの見えない構造が、そこにはあるのです。(『いきいき』2012年5月号より転載)

「掛け捨て」に着目してみる

橋下徹大阪市長が「維新版・船中八策」の中で、「掛け捨て年金」を提案しています。具体的な内容は詳らかになっていませんが、年金はじゅうぶんな老後資金がないときのための保険で、資産家や高所得者には支給しないということのようです。ここでは政策の当否は別として、年金の「掛け捨て」について考えてみましょう。

驚くひともいるかもしれませんが、すべての保険は「掛け捨て」で、その仕組みは宝くじと同じです。宝くじでは、外れたひとから当せんしたひとにお金が移ります。外れを引けば宝くじ代金は戻ってきませんから、当然“掛け捨て”になります。

生命保険というのは、「不幸の宝くじ」のことです。生命保険では、(たとえば)20年という保険期間を無事に過ごした幸運なひとが「外れ」を引き、事故や病気で死亡したら「当たり」です。保険料は掛け捨てになりますが、誰もが「当せんしないこと」を願っているわけですから、「外れることに意味がある宝くじ」ともいえます。

掛け捨ての保険(不幸の宝くじ)はとても単純な仕組みで、“胴元”である保険会社の取り分が少なければ少ないほど保険金(当せん金)は多くなり、あるいは保険料(宝くじ代金)が安くなります。よく知られているように、日本の宝くじの胴元(日本宝くじ協会)の取り分が約50%です。競馬や競輪などの公営ギャンブルはまだマシですが、それでも約25パーセントが経費として差し引かれます。これはきわめて割の悪いギャンブルなので、宝くじは「愚か者に課せられた税金」と呼ばれるほどです。

生命保険の経費率は割の悪いギャンブル!?

それでは、日本の保険商品の経費率はどのくらいになるのでしょうか。驚くべきことに、日本の大手保険会社はこれまで、保険商品の経費率を「企業秘密」として公開してきませんでした。そのうえ不思議なことに、似たような商品の保険料はどれもほぼ同じでした。

ところが10年ほど前に、“格安保険料”を売りにする新興の保険会社が登場すると、困ったことが起きます。「30歳男性、保険期間20年、保険金5000万円」などと内容が決まれば、保険料が即座に比較できてしまうのです。

 そこで大手保険会社は、掛け捨てと積み立てを組み合わせて商品内容を複雑にすることで対抗しました。加入者が簡単に保険料を比べられないようにするという作戦です。それにしてもなぜ、こんな不思議なことをするのでしょうか? それは、生命保険の経費率がとてつもなく高かったからです。

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