炎上社会に立ち向かう「逆転力オリンピック」【第74回】

東京五輪のエンブレム問題で大きな注目を浴びた佐野研二郎さん。佐野さんの過去作や他のデザイナーの作品にまで燃え広がり大炎上となった本件ですが、なぜこれほど炎上してしまったのでしょうか。炎上との付き合い方、佐野さんの再起の方法などを勝手に分析します。

9月第4週の主なできごと
・ラグビーW杯、日本が歴史的勝利(9月20日)
・VW排ガス不正、経営揺るがす事態に(9月22日)
・川島なお美さん死去 54歳(9月24日)
・安倍首相、「新三本の矢」を発表(9月24日)
・牛丼3社が一斉値引き、安値競争に逆戻りか(9月26日)

パクリ騒動を増大させるネットの連帯感

おぐらりゅうじ(以下、おぐら) 白紙撤回ですって。

速水健朗(以下、速水) え、安保法制?

おぐら いえ、パクリ問題で大紛糾した五輪のエンブレム問題の方です。

速水 いまさらその話題か。さすがにテレビもそのネタに触れなくなってきたのに。

おぐら まあそう言わずに。パクリ騒動は、佐野研二郎氏以外のところにまでいろいろ飛び火しましたよね。同業のデザイナーが佐野氏を擁護すれば、すぐにその人のデザインしたものと似たデザインを探してきて、「こいつもパクリだ」と騒いでみたり。

速水 あとは、佐野氏の母校でもある多摩美の卒業制作優秀賞がいわさきちひろのパクリだと炎上。これは、作品によってはパロディかどうか微妙なものもあるけど、作品群全体として見た場合には、まあパロディだよね。

おぐら ネットで騒がれたせいで、いわさきちひろ記念事業団が抗議を表明したそうです。

速水 また余計なことを。Twitter見てると、パロディは許可を取ってやれって言う声が多く、ネット民の間に、強い作家主義願望みたいなものが共有されている気がする。神クリエイターがつくった圧倒的なオリジナル作品のみが存在を許されるのかっていうと、そもそもそんなものは存在しないと思う。

おぐら それと創作に限らず、異常に潔癖なところがありますよね。聞いた話で驚いたのは、チケットが入手困難な人気ミュージシャンのライブに行くことをツイッターやブログに書くと、「チケットが取れなかったファンの気持ちを考えて発言してください」みたいなお叱りがくることもあるらしいです。

速水 それは異常だね。そもそも佐野エンブレム問題がここまで大炎上したのは、まず餌が多かった。佐野氏の過去の仕事から、次々とパクリ疑惑案件が出てきて、ネット総出の発掘作業というゲームになってしまった。

おぐら こういうときのネット上における連帯感と集合知の威力は圧巻です。とか悠長なことを言ってる場合じゃないですよね。そのゲーム性ゆえ、架空の敵キャラを倒す感覚で叩きまくるじゃないですか。SNSの普及で「芸能人が身近な存在になった」とか言われてますが、今回の事態を見ていて、まだまだネットの向こうにいる人は、生身の人間としての実在感が薄いんだろうなって思いました。その人にも自分と同じように人生や生活があることを想像する力が、全然追いついてない。

速水 その話とも繋がるけど、2つめは、広告代理店や広告クリエイターといった、ちやほやされて儲かっていそうな世界は叩いてもいいっていう空気がネットにはある。芸能人も同じ理屈でしょう。まあ嫉妬だよね。

おぐら 「嫌儲」なんていう言葉もあります。儲かっている以上、不正は絶対に許さない、っていう。

速水 3つめは、中川淳一郎にインタビューした際に聞いた話だけど、佐野側のネット対応のまずさだよね。彼らは、やってはいけないことをすべてやったと。

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おぐらりゅうじ /速水健朗

政治、経済、文化、食など、さまざまジャンルを独特な視線で切り取る速水健朗さんと、『TVブロス』編集部員としてとがった企画を打ち出し、テレビの放送作家としても活躍するおぐらりゅうじさん。この気鋭のふたりのライターが、世の中のニュースを好...もっと読む

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oguraryuji ネットに恋人とのキス写真とか当たり前のミクチャ世代には「晒される」という概念がもう古いのでは?という話 3年弱前 replyretweetfavorite