聞き手 本書編集担当・吉岡宏(中央公論新社 特別編集部)
担当 昨年刊行した『日本一「ふざけた」会社のギリギリセーフな仕事術』。刊行までとても苦労しましたが、そのぶん、なかなかの名著ではないかと担当として感じています。特にギリギリセーフな企画の「生み出し方」や「実現の仕方」。これらの技術は、差別化が必要となるこれからの時代で生き残るために必読ではないかと。シモダさんご自身、こういった本を出したことでやはり何かが変わりましたか?
シモダテツヤ(以下、シモダ) 特に何も変わってないです。無理矢理いえば著書がある、ということで「少しはちゃんとした人なのかな?」と勝手に周りが勘違いしてくれることくらいでしょうか。
担当 本を出した後、バーグハンバーグバーグさんが作られた企画が大きな話題になっているのを拝見する機会も増えました。きっと「話題化させてしまう方法」とか、社員のみなさんもしっかり読みこんでくれたのでしょうね。
シモダ いや、本に書いてあることは普段から会社でよく話してたことなんで、全部知ってた、という感想がほとんどでした。20分で読めたとも言われたので、適当に斜め読みされた可能性もあります。
担当 きっとご両親からも、うれしい反応があったのでしょう?
シモダ ああ、ありました。父からは「お前が意外と読ませる文章を書けることに驚いた」といった割と長文の感想メールをもらいました。地味に今回の執筆の中で一番うれしかった感想だったかな。母からは「面白かったです。」とだけ来てました。絶対読んでないわ、ウソついてるな、と直感できるメールが届いてました。妹はもともとそんなに仲良くないんで。しばらく音沙汰がありません。
担当 出版をきっかけにテレビ出演も多くなったような。
シモダ 出版のせいかはわかりませんが、最近朝のニュース番組のコメンテーターとしてテレビに呼んで頂くことがあるのですが、すごく新鮮な体験です。コメンテーターとしては1年坊主なので、緊張感を持って挑めてるのが刺激になっています。この前、政治のニュースについてコメントを振られたんですが、しっかり自分の言葉で『わかりません』と答えることができました。
シモダ 裏話ですか。うーん、協力をお願いしていた友人のライターさんが飛んだ、ということがありました。彼とはこれで縁が切れてしまいました。あれから一度も連絡をとっていません……あ、この本を出して変わったこと、ひとつありました。それは友人を失ったこと。結局自分で全部書くことになったので思い入れの強い本にはなったのは良かったと思うのですが、そのライターの彼を街で見かけたら、グレートムタばりの毒霧を吹きかけてやろうとは考えています。
担当 cakesさんとしてはこの話、掲載しても問題ない? あっ、cakesでも書かれているんですか。そうですか、じゃあ続けましょうか。
シモダ もともと13年の7月に企画が動き出して、12月に出そう、といっていたのに、ライターの彼が締め切りをぶっちぎって。年をまたぎ、いつの間にか4月となり、刊行時期が見えなくなって。ライターさんを指名した責任もあったので、しぶしぶ自分で書くことになりました。この判断をしてしまったことには心から後悔しましたね。そこからは逃げたい、逃げたいと、そればかり考える日々。
いま振りかえってみると、今回の執筆は、同時にそのライターの友人の逃避を追体験する、そういうことだったのかもしれません。早く毒霧を吹きつけてやりたいです。
担当 ……。
第二回 『初の書籍なのに「旅館にこもらないと書けない」と担当にのたまう』 は10月12日公開予定!