どうやらいつも、狙ったように私にだけ小バエが寄ってくる。
……あるときふとそう思ったけれど、すぐに、いやいや、と否定して自分を戒めた。「私にだけ」って、さも選ばれたかのように思うなんて。元をたどればこの気持ち、自分はいつかマイケルに見初められると、彼の生前、祈るように信じていたのと同じおこがましさに端を発している(一時期私はマイケルジャクソンにどハマりしていたのだ)。そうに決まっているのだ。
たとえば「私がサッカーの試合を見ると絶対負けるんだよね」とか「私、雨女なんだよね」とか。実際にその言葉の通りに自分が特殊能力を持っていて、それによって他人の運命や天候、虫の居所(文字通りの意味で)までを左右できる人間であったとしたら、途端に人生劇場のヒロインとしての気概がムクムクと湧いてくる。だからこそ、有り得ないとわかっていても望んでしまう。
他の人が持ち得ない特別な物語へと続く扉が、私の前にだけ現れてほしいのだ。
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