山内宏泰
青が支配する世界——渡邊有紀写真展「内海」
ひさしぶりの連休となるシルバーウィーク。海外や国内に旅行に行くという方も多いでしょうが、いそがしくて予定を立てられなかったという方、青山のNORTON GALLERYではじまっている渡邊有紀写真展「内海」に足を運ぶのはいかがでしょうか? 待ち構えるのはやさしい線と複雑なにじみで構成された作品。絵画のように思えるこれは実は写真。いったい何をうつしたものなのでしょうか?
端的に美しい画面に見惚れていると、意識はいつしか、どこまでも広くて心地いい場へと運ばれていく。気持ちをそこに浸していると、ふと元の場所へ戻れなくなってしまいそうで畏れすら感じる——。そんな感覚を味わえる展示にご案内いたしたくおもいます。
東京青山、NORTON GALLERYではじまっている渡邊有紀写真展「内海」です。
タイトルの「内海」は、「うちうみ」と読むようですね。聞き慣れないことばのようにおもいますが、みなさんがよく知っているものを指しておりますよ。これは瀬戸内海のこと。今作の撮影地となっている瀬戸内の海を、愛情と親密さを込めて「内海」と呼んだのでしょう。
作品の成立過程はこうです。
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この連載について
山内宏泰
世に“アート・コンシェルジュ”を名乗る人物がいることを、ご存じでしょうか。アートのことはよく知らないけれどアートをもっと楽しんでみたい、という人のために、わかりやすい解説でアートの世界へ誘ってくれる、アート鑑賞のプロフェッショナルです...もっと読む
著者プロフィール
ライター。美術、写真、文芸その他について執筆。著書に『写真のフクシュウ 荒木経惟の言葉』(パイインターナショナル)『写真のフクシュウ 森山大道の言葉』(パイインターナショナル)『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)『写真のプロフェッショナル』(パイ インターナショナル)『G12 トーキョートップギャラリー』(東京地図出版)『彼女たち』(ぺりかん社)など。東京・代官山で毎月第一金曜日、写真について語るイベント「写真を読む夜」を開催中。東京・原宿のスペースvacantを中心に、日本写真を捉え直す「provoke project」開催中。
公式サイト:http://yamauchihiroyasu.jp/