第三回 死ぬほど驚愕!?『デザイン墓石写真集Ⅱ』など珍書2冊!

2014年に刊行した『ベスト珍書』。世の中にある珍書を選び抜いたその本から、さらに担当編集者がチョイスしたヤバイ本を、本文より抜粋してご紹介。今回は避けては通れない深刻な問題、「死」にまつわる内容ですが……それでもやっぱり”珍”な2冊をご紹介。世にも類まれなる珍書、さあ、あなたは読んでから人生を終えますか、それとも読まずに終えますか?

出家者が性欲を断つための死体腐乱仏教画集
『九相図資料集成―死体の美術と文学』
(山本聡美︑西山美香編/岩田書院/2009年)

 九相図とは死体が腐乱していく過程を9段階に分けて描いた絵画のことである。仏教の出家者は自らを着飾って立派に見せようとする自己愛や、性欲を断つ必要があった。したがって死体は女性であることが多い。生きている時は艶めかしい女体が死体となり、腐乱し、朽ち果てていく様子を九相図で見ることによって、現世の肉体に対する煩悩を捨て去った。また死体を晒すことが信仰心の表れであるとされ、九相図で描かれた女性たちは尊敬の対象ともなった。

 この本で掲載されている九相図はいずれもかなりグロテスクだ。最初は寝ているだけのように見える死体も徐々に土色に変色し、腹が膨れ始め、犬やカラスに手足をもぎ取られ、内臓が飛び出し、ウジが湧き、最後は白骨化している。

 確かにこれらの死体の絵を見ていると、女体に対する性欲は収まるかもしれない。しかしインターネットのグロ画像をつい見てしまいたくなるような、禁断の悪趣味的好奇心を大いに刺激され、結果的に別の意味でイヤらしい本にも見えてならない。

 美術史の分野から九相図を研究していた山本聡美氏と、国文学の分野から研究していた西山美香氏が出会ったことからこの企画が生まれた。多くの九相図は日本の博物館に所蔵されているが、江戸期のものがボストン美術館など海外でも収蔵されており、海外での九相図の関心も高いそうだ。

 刊行元の社長が書いた『ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏 Part 3』によると、副題を「女性腐乱死体へのまなざし」としようとしたところ、女性である執筆陣に反対され、この副題になったとのこと。しかし相当マイナーで変わったテーマでもあり、8900円もする本書だが、好事家やネクロフィリアなどから注目を得てしまったのか、版を重ねており、その祝いとして執筆陣と社長で旅行まで計画されるほどの売れ行きだそうだ。

 余談だが日本のデスメタルバンド・Medic Vomting Pus がこの本に出てくる九相図の画像を『Thoracoabdominal Viscerectomy』というアルバムのジャケットに載せている。



進化し続ける墓石の最前線
『デザイン墓石写真集 Ⅱ』
(六月書房/2005年)

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ベスト珍書』自体が珍書なこれだけの理由

ハマザキカク

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