日本特有の特撮映画を存分に感じさせる仕上がり
原作漫画『進撃の巨人』は、現在も漫画雑誌で連載が続き、若いファンの心を掴んだアニメ・シリーズは第2シーズンの製作が決定したようだ。そして実写版映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』の前篇は、期待半分不安半分であったが、それを見事に覆し、日本特有の特撮映画を存分に感じさせる仕上がりを見せていて、大いに歓喜してしまった(特に前篇は……)。
原作漫画は連載中だし、観る前から実写映画としての脚色必須が容易に想像できた。最も気になったのは、原作にある巨大な壁からして西欧風の空気が感じられるし、その壁内には中世期のような西欧建築物が建ち並び、東洋人とは異なる多くの外国人らが登場する。アニメではそのまま表現できたとしても、実写ではエキストラも含め、多くの外国人俳優をキャスティングしない限りは、そのままというわけにはいかない。もっとも外国人風の役名に関しては、昨今のキラキラネームの流れから察すれば、あまり違和感はなかったが。
だから日本人俳優たちが多数出演する中、原作のような西欧中世期以降の建築物が並ぶのは、どう見てもおかしい。そのあたりを当然考慮してか、中東風の建物とかバラック風の造りにして、無国籍感溢れる匂いを存分に放っていて良かった。
そして、主要な登場人物の背景も脚色がなされていた。原作ファンからすれば許し難いと思うだろうが、原作の重要なエッセンスは掬い取っていたし、許容範囲だった。
冒頭、エレン(三浦春馬)が草原に突き刺さった不発弾の上に立ち、ミカサ(水原希子)とアルミン(本郷奏多)の前で、「皆、ふきとべばいい」と呟いた。壁内で平穏に暮らせと言う体制側は、技術革新を促すような研究やそれに類する行為を嫌い、壁外に出ることを固く禁じていた。エレンは、壁内の限られた世界で、決められたレールの上に乗らされ、牢獄のような細々とした生活から一刻も早く脱したいと考えていた。国民にも沸々と不満が湧き上がっているようだが……。
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