真っ白なWordの画面を前に、なんにも書けなかった。
先週は、もう出来ていた原稿しか納品できず、29,000円稼ぐのが精いっぱいだった。
私は、フランス人女性とフランスの法律で結婚し、ふたりで暮らしている日本人女性である。妻は編集者で、私は文筆家だ。婦妻の共同名義で買った我が家で、丸テーブルにパソコンを乗せて原稿を書いている。今夜は妻と故郷に帰る。義父母と猫が待っている。
こんな結婚生活を私たちは、別段“同性婚”だとは思っていない。それは、たとえば“異人種間結婚”“格差婚”“できちゃった婚”などという言葉を、結婚生活を送る本人たちが名乗らなくても周囲の人々が使っているという構図に似ている。
別段、構わない。誰になんと表現されようが、妻と私は変わらない。ただ、時々、思い知らされる。私たちのような結婚のかたちを、良くも悪くも“結婚”ではなく“同性婚”として見ている誰かのその視線を。たとえば8月27日、フランスで初めて“同性婚”をした男性のツイッターアカウントに対し、ある画像が送られた。
画像部分が塗りつぶされているのは、編集さんのミスではない。あまりにもショッキングな内容なのであえて伏せている。というのも、その画像というのは、上半身裸にされ、胴体を切り裂かれた男性の死体画像だったからだ。
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