なぜ今、ザハ・ハディドを語るのか

「新国立競技場」問題で一躍時の人となった建築家のザハ・ハディドさんですが、設計案が白紙撤回されてから2ヶ月ほどが経ち、世間の関心は急激に薄まっているそう。停滞感の漂う新国立問題、ザハさんが◯◯化してくれたら打開できるんじゃ……?と武田砂鉄さんが打開案を投げかけます。

「電車の中でザハ・ハディドに似たオバさんを見た」

「なぜ今、ザハ・ハディドを語るのか」とタイトルに掲げるほどの必然性など全く見つけ出せていないのだが、こういうタイトルを用意してみれば何かが動き出すような気がしたのである。あらゆる方向の記事で「なぜ今、○○なのか」というタイトルを見かけるが、「なぜ」に答えてくれている確率は、甘めにジャッジして半々といったところである。では、なぜ今、ザハ・ハディドなのだろう。「次週はこの人でどうですか?」と何人か候補を挙げてくれた担当編集者に「では、ザハで」と返答したものの、必然性は湧いてこない。

おもむろにリアルタイム検索してみると、「ザハ・ハディド」で検索している人が少ないことに驚く。せいぜい1日に10件程度である。安倍首相が新国立競技場の白紙撤回を表明したのは7月半ばのことだから、かなりの勢いで人々が興味を失っていることがわかる。注目すべきは検索に引っかかった少ない書き込みのうち、「電車の中でザハ・ハディドに似たオバさんを見た」「ザハさん、前勤めてた会社の渡部さんっていうパートさんに似てる」といった書き込みが散見されること。ザハに似ているオバさん、という不本意な居残り方をしているのである。

「雰囲気」で放られたザハ・ハディド

みうらじゅんは時折、ナオト・インティライミの底抜けの明るさを称して「ティライミ感」という言葉を使う。おそらく、みうら本人は彼にそこまで積極的な興味を持っていないはずであり、それは私も同じくなのだが、それでもその「ティライミ感」をしっかり共有することができる。BBQをやれば積極的に焼いて取り分けてくれそうな雰囲気。どんな悩み事を相談しても「笑っていれば大丈夫!」と明るく返してくれそうな雰囲気。雰囲気だけなのに、苦手だ。

ある有名人に漂っている雰囲気って、情報や思いが入り込みすぎているファンよりも、外からその人を眺めている立場同士のほうが共有しやすい。雰囲気の中に埋もれている人は雰囲気を把握することができない。ザハ・ハディドという人物は、建築やアートに詳しい人以外には、最後まで歩み寄ってこなかった。つまり、かなり相当数の国民が「雰囲気」のまま彼女を放っている。これほど入り込まれない有名人も珍しい。話題になったわずか数ヶ月後に「近くのオバちゃんに似てる」という見解が取り残されているのは、そのひとつの証拠かもしれない。

「巨大なチューインガム状の丘をさまざまな方向へ伸ばしたよう」
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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

aknmssm 大型ルーキーのこの人の原稿をずっと、判断保留にしながら読み続けてきたけど、もういいや。武田砂鉄はつまんねえ。賢しらな今井舞って感じ。 4年弱前 replyretweetfavorite

ew_os 秘仏な件: 4年弱前 replyretweetfavorite

chiyio1011 ザハさんは仏像みたいな雰囲気がある QT 4年弱前 replyretweetfavorite