高校を卒業してすぐ、恋人と同棲するために借りたワンルームマンションには「ピュアドーム」という名前がついていた。当時は何の疑問も持たなかったが、よく考えるとアダルトグッズみたいである。誰がどんな理由でこんな名前にしたのか。ホットなカップルにふさわしいようなふさわしくないようなこの「ピュアドーム」を皮切りに、私たち家族はこれまで何度となく、引越しを繰り返してきた。
「今度はこっちに住みたい」と望んで引越したことも、諸事情により「仕方ないね」と言って越したこともある。思い立ったが吉日、常に上昇志向で安定を嫌う起業家と結婚すると、うちみたいなことは比較的よく起こるようだ。ちなみに今住んでいる家で13軒目。18歳で実家を出て今年で15年経ったということは、ほぼ毎年引越しをしていたようなものだ。まったく馬鹿なお金の使い方をしたなと思うけれど、一方で今思えば、あのとき一瞬でもあの家に住んでいたからこそ出会えた人や知り得たこと、その積み重ねが、今の私を生かしてくれている。