渡辺由佳里
アメリカの政治家は、民家のリビングルームで育つ
日本での政治家といえば、お固いイメージで身近な存在とは言いがたいものですが、なんとアメリカでは立候補者をふつうの家庭のリビングルームに政治家を招いて話を聞くという選挙活動が普及しているそうです。なぜ、一般市民がボランティア精神をそこまで発揮し、町や政治家を支えているのか。その理由をひもときます。
アメリカの民主主義をささえるもの
私が住んでいるマサチューセッツ州レキシントン町には「町長」という職がない。
町を運営するのは、町議会(Town Meeting)、行政委員会(Board of Selectmen)、タウンマネジャー(Town Manager)の三つの部門である。予算や条例を決めるのが町議会で、町の方針を決めるのが行政委員会、行政委員会の監督のもとに直接町政を運営するのがタウンマネジャーだ。
日本人にとってたぶん意外なのは、給与をもらっているのがタウンマネジャーだけという事実だ。住民の直接選挙で選ばれる21人の町会議員と5人の行政委員は、すべて無給のボランティアである。
幼稚園から高校まで一環した町の公立学校システムも、同じような形で運営されている。町議会が可決した予算の詳細と学校の方針を決めるのは選挙で選ばれた無給ボランティアの5人の教育委員で、学校の具体的な運営の責任者が有給の教育長だ。
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この連載について
渡辺由佳里
「アメリカンドリーム」という言葉、最近聞かなくなったと感じる人も多いのではないでしょうか。本連載では、アメリカ在住で幅広い分野で活動されている渡辺由佳里さんが、そんなアメリカンドリームが現在どんなかたちで実現しているのか、を始めとした...もっと読む
著者プロフィール
エッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家。助産師、日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、1995年よりアメリカ在住。
ニューズウィーク日本版に「ベストセラーからアメリカを読む」、ほかにFINDERSなどでアメリカの文化や政治経済に関するエッセイを長期にわたり連載している。また自身でブログ「洋書ファンクラブ」を主幹。年間200冊以上読破する洋書の中からこれはというものを読者に向けて発信し、多くの出版関係者が選書の参考にするほど高い評価を得ている。
2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。著書に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、糸井重里氏監修の『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)、がある。