おへそも狙うパパラッチの目なんか気にしていられないっ!!
テイラー・スウィフトは今年の2月、自身のインスタグラムアカウントの4500万人のフォロワーに向けて、ビキニ姿を公開した。友人とハワイに行ったときの写真だという。彼女はこれまでお腹周りの露出を避け、あばら近辺までしか肌を見せてこなかった。はじめてビキニ姿を見せた理由は、「パパラッチに稼がせないため」なのだそう。彼女の「おへそ」がカメラに狙われ、多額のお金が動いているという、滑稽な状況があぶり出された。
メディアを鵜呑みにしやすいわたしたちの手にかかれば、美談も醜聞も、出どころの裏付けもなく簡単に広く知れ渡る。インターネットが一般にも普及して久しい現在なら、なおさらだ。最近だと、新国立競技場の整備計画で、建築家のザハ・ハディドによる奇抜なキール・アーチのデザインが、2520億円にものぼる予算の原因として糾弾されていた。ザハの起用は白紙にされたが、彼女のデザイン事務所により、コスト増の別原因の指摘や代替案の用意が発表された。かつて「アンビルドの女王」と呼ばれた過去が災いしたのか。
「ポップス界のプリンセス」であるテイラーとて他人事ではない。メディアを通して、わたしたちは彼女のライフスタイルを、恋愛遍歴を知りたいと欲望してきた。だからパパラッチが撮り、雑誌やネットで出回る。その結果、彼女は男を取っかえ引っかえにしてると集中砲火を浴びてきた。また、世に音楽を発表するたびに批判にも晒されてきた。ゴーストライターの存在もウワサされた。
彼女の大ヒットシングル “Shake It Off” は、悪意の声やウワサ話に耳を傾け、神経をすり減らし、気をもむことからの解放を歌っている。
身体を揺さぶる(shake)ダンスへと誘う、圧倒的にポジティブなビートに乗ってテイラーが高らかに歌うこの、王道のポップスのミュージックビデオでは、彼女はかっこつけて踊ったりはしない。むしろ、コメディエンヌのようですらある。自身の生々しい恋愛体験を歌詞に織り込むことで、普遍的なテーマにドキュメンタリーな手触りをもたらす独自の音楽性を追求してきた、彼女の等身大の姿がこのスタイリッシュな楽曲からもうかがえる。現在放送中の「家庭教師のトライ」のCM「Try IT はじまる」篇に起用されたのも、踊りたいと思わせる多幸感と親しみやすさにあふれているからではないだろうか。
批評家の悪口も明るさに転じるテイラー
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