11月某日。僕は再び、セブにいた。これで3回目だ。空港でタクシーを拾う。なぜだかセブの街が静かに感じられた。いつもはタクシーのクラクションが耳につくのだが、今回はみんながクラクションを鳴らさない気がする。
さっそく中西くんとスターバックスで落ち合った。「セブが静かになった気がする」と告げると、彼は一笑に付した。
「何言ってるんすか?相変わらずメッチャうるさいっすよ! 松井さんの耳が騒音に慣れただけとちゃいます?」
中西くんに会うのはまだ2度目なのだが、あまりに頻繁にやり取りしているせいか、もう10年も前から知っているような気がする。彼は僕がいない間にアパートを契約し、すっかりセブの住人になっていた。コーヒーをすすりながら現地での進捗を聞く。とにかくいろいろとある。
パソコン購入
まずはTESDAに提出する書類の準備だが、書類作成には当然のことながらパソコンがいる。ところが、現地で雇った3人は自分のパソコンを持っていないのだ。一人は父親とパソコンを共有。もう一人は持っているのは持っているのだが、キーがいくつか取れてしまった、いつ動かなくなってもおかしくないような代物だった。そして最後の一人は持っていない。
この国ではスマホを持っている人はいくらでもいるのだが、パソコンとなると途端に誰も持っていない。持っていたとしても誰かのお下がりで、みんな壮絶なヤツを使っている。フィリピン人は海外で働いている人が多いので、そうしたツテを辿って中古のパソコンを手に入れるようだった。スタッフの一人のパソコンも、かつてヨーロッパに出稼ぎ労働に行っていた叔母に譲ってもらったという代物だった。インストールされているウィンドウズもどうやらバッタものらしく、ソフトウェアアップデートがインストールできないのだ。
この話は事前に聞いていたので、今回僕は、パソコンを1台アメリカで購入して持ってきていた。そして、とりあえずパソコンを持っていないスタッフにこれを支給した。彼の顔が喜びで溢れる。そしてアップルストア・フィリピンであと2台注文。なぜか配送日が2週間以上あとの日付になったが、まあよしとしよう。
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