アメリカン・ドリームを目指す5日間
この連載の第1回で7000人が集まる世界一の人生セミナー体験談をご紹介した。
あれだけでも「私にはついていけない熱気」とたじたじしていたのだが、ひょんなことから、同じトニー・ロビンズの、さらに濃厚な「ビジネス・マスタリー 」というコースに招待された。昨年末に発売されたとたんベストセラーに踊り出た『Money Master the Game』は「financial freedom(経済的に余裕がある状態)」を達成する方法を説くもので、「ビジネス・マスタリー」のコースは、この本の内容に関わるものらしい。
撮影:John Eberts
ありがたいのだが、正直私はたじろいだ。
夫の家族やその知り合いには典型的なアメリカのWASP+経済的成功者が多い。典型的な経済的成功に対する興味が先天的に欠如している私にとって、彼らの真っ直ぐ過ぎる成功への情熱に取り囲まれるのは疲れるものである。とくに私は、子供のころは『窓際のトットちゃん』そっくりで、今でも長時間座って人の話を聞くのが大の苦手なのだ。
100万円前後もする「ビジネス・マスタリー」のコースに来るのは、それだけ経済的成功についても真剣な人に違いない。そんな人々に5日間囲まれるのはちょっとどころでなく怖い。考えるだけで胃が痛くなったのだが、「人間ウォッチング」を人生の趣味とする者としてこんな好機は逃すべきではないだろう。迷ったすえ、「えいやっ」と腹を決めて夏のセミナー開催地のラスベガスに飛んだ。
勉強セミナーなのにフェスのノリ?
ところで、アメリカでもトニー・ロビンズに対する人々のリアクションはほぼ2つに分かれる。
「彼のおかげで人生が良い方向に変わった」という大絶賛と、「カルト的な匂いがする」という猜疑心である。
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